結論:ALD(原子層堆積)とCVD(化学気相成長)の違いは?
ALDとCVDの最大の違いは「自己制限反応の有無」です。ALDは前駆体と反応ガスを交互にパルス供給し、1サイクルで1原子層ずつ積み上げるため、Å(オングストローム)精度の膜厚制御とアスペクト比50:1以上の深孔でも均一な被覆を実現します。CVDは原料ガスを同時供給して連続成膜するため高速ですが、膜厚制御は数nm〜μmオーダーが中心です。
比較表
| 観点 | ALD(原子層堆積) | CVD(化学気相成長) |
|---|---|---|
| 反応メカニズム | 前駆体Aの自己飽和吸着→パージ→反応ガスBの自己飽和反応→パージ(1サイクルで1原子層) | 原料ガスを同時または準連続に供給し、気相反応で連続成膜 |
| 膜厚制御精度 | GPC(Growth per Cycle)×サイクル数でÅ〜サブnm精度の制御が可能 | 成膜時間・ガス流量・温度で制御。通常数nm〜μmオーダー |
| 段差被覆性 | アスペクト比50:1以上の深孔・深溝でも均一被覆(自己制限のため) | PECVDはコンフォーマルだが高ARには限界。HDPCVD等は穴埋めに特化 |
| 成膜温度 | Thermal-ALD:150〜400°C。Plasma-ALD(PEALD):室温〜200°C | PECVD:200〜450°C。LPCVD:550〜900°C(膜種による) |
| スループット | サイクル数の積み上げが必要(薄膜が前提。数nm〜20nmなら許容範囲) | 連続成膜のため中〜高スループット。PECVD枚葉機で200 WPH以上も可能 |
| 適用膜種 | HfO₂・Al₂O₃(High-k絶縁膜)・TiN・TaN(バリア)・ZrO₂・3D NAND層間絶縁膜 | SiO₂(ILD・STI)・Si₃N₄・W-plug・poly-Si・FSG(フッ素添加酸化膜) |
| 膜の均一性(WiW) | サイクル制御で極めて高い面内均一性(±1%以下) | 良好だが膜種・機種により差がある(±2〜5%程度) |
| 代表装置メーカー | ASM International(Eagle/Emerald)・Applied Materials(Olympia ALD)・Lam Research・TEL | Applied Materials(Centura)・Lam Research・TEL(Trias)・Kokusai Electric |
ALDがFinFET・3D NANDに不可欠な理由
FinFETトランジスタではゲートの三次元フィン形状を均一に覆うゲート絶縁膜(HfO₂:High-k)とゲートメタル(TiN)が必要で、アスペクト比が高くCVDでは均一性に限界が出ます。ALDは自己制限反応でフィンの上面・側面・底部を均一に被覆できるため不可欠です。3D NAND(64〜200層以上)では高アスペクト比のセルホールにSiO₂/Si₃N₄積層膜を均一成膜する必要があり、ALDが主力プロセスとなっています。
Plasma-ALD(PEALD)とThermal-ALDの違い
Thermal-ALD(熱ALD)は熱エネルギーのみで自己制限反応を起こすため、比較的高温(150〜400°C)が必要です。Plasma-ALD(PEALD:プラズマ強化ALD)はプラズマで反応種を活性化し室温〜200°Cの低温成膜を実現します。PEALDは金属配線後の低温工程でも使えるため、銅配線のバリアメタル(TaN)成膜やBEOL工程での採用が広がっています。一方、プラズマによる膜・基板へのダメージリスクを管理する必要があります。
ALDとCVDの使い分けの目安
極薄膜(<5nm)または高アスペクト比構造(AR>10:1)にはALDを選択するのが原則です。具体的には:ゲート絶縁膜(HfO₂:1〜3nm)→ALD、バリアメタル(TiN/TaN:数nm)→ALD、STI埋め込み(>100nm SiO₂)→HDPCVD/PECVD、W-plug(>50nm)→W-CVD(WF₆系)、3D NANDの積層絶縁膜(数〜数十nm×100層超)→ALDが標準的な使い分けです。