PECVD(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition/プラズマ強化化学気相成長)は、RFまたはマイクロ波プラズマのエネルギーを用いて原料ガスを励起・分解し、200〜400℃という比較的低温で薄膜を形成するCVD技術です。通常の熱CVDが必要とする600〜900℃のプロセス温度を大幅に引き下げられるため、熱耐性の低い材料が既に形成された後工程でも成膜が可能です。
プラズマによってガス分子が解離・励起されることで、化学反応に必要な活性化エネルギーが供給されます。主に容量結合型プラズマ(CCP)や誘導結合型プラズマ(ICP)が使われ、プラズマ密度・RFパワー・ガス組成・圧力を制御することで膜質(屈折率・応力・水素含有量)を広範囲に調整できます。
代表的な堆積材料は、シリコン酸化膜(SiO₂)、シリコン窒化膜(SiNx)、シリコン炭化窒化膜(SiCN)、非晶質シリコン(a-Si)、有機low-k絶縁膜などです。多層配線工程の層間絶縁膜(ILD)、表面保護膜(パッシベーション)、エッチングハードマスクとして幅広く用いられます。
先端ロジック(5nm以下)ではゲート・スペーサー材料に極薄のSiN/SiCN膜が求められ、膜厚均一性・膜応力の精密制御が不可欠です。また3D NAND製造では数十層ものSiO₂/SiN積層膜をPECVDで連続成膜するため、スループットと膜質の両立が装置選定の鍵となります。
主要装置メーカーはApplied Materials(Producer系)、Lam Research(ALTUS、Vector系)、東京エレクトロン(Telindy系)です。プラズマダメージ(高エネルギーイオンによる基板ダメージ)の低減、低温化、film conformality(段差被覆性)の向上が各社の技術競争ポイントとなっています。