半導体の種類|Si・SiC・GaN・GaAsの違いと用途
半導体材料は目的に応じてさまざまな種類があります。シリコン(Si)はコストと加工性で圧倒的な汎用材料ですが、高電圧・高周波・高温など特殊な用途ではSiC・GaN・GaAsなどの「化合物半導体」が優位です。近年はEV(電気自動車)やデータセンター向け電力変換でSiC・GaNパワー半導体の需要が急増しています。
ポイント
- ▸シリコン(Si):最も汎用、コスト最安、ロジック・メモリ・アナログの主役
- ▸SiC(炭化ケイ素):高電圧・高温に強い、EV・産業インバータのパワー半導体
- ▸GaN(窒化ガリウム):高周波・高効率、5G基地局・急速充電器に採用拡大
- ▸GaAs(ヒ化ガリウム):高い電子移動度、スマートフォン向け高周波フロントエンド
- ▸InP(リン化インジウム):光通信・データセンターの光集積回路に使用
シリコン(Si)——量産半導体の王者
シリコンはバンドギャップ1.1eVの元素半導体で、地球上で酸素の次に豊富なケイ素から精製できます。高純度単結晶ウェハの製造(チョクラルスキー法)、MOS酸化膜(SiO₂)の高品質化、CMOSプロセスの成熟など、数十年にわたる技術蓄積により圧倒的なコスト優位を誇ります。CPU・GPU・DRAM・NANDなどロジック・メモリの大半はシリコンチップです。弱点は高電圧・高温環境でのリーク電流増大であり、そこを化合物半導体が補います。
SiC(炭化ケイ素)——EV時代のパワー半導体
SiCはバンドギャップ3.3eVのワイドバンドギャップ半導体です。シリコンと比べて10倍の絶縁破壊電界を持ち、高温動作・高電圧下でのスイッチングロスが大幅に小さいため、EVのインバータや産業用電源装置で急速に普及しています。Teslaが2017年のModel 3でSiC MOSFETを採用したことで市場が活性化しました。STMicro・Wolfspeed・ロームなどが主要サプライヤーです。Si基板と比べてSiCウェハは高価で欠陥密度が高い点が課題です。
GaN(窒化ガリウム)——高周波と急速充電の新星
GaNはバンドギャップ3.4eVのワイドバンドギャップ半導体で、高い電子飽和速度と電子移動度を持ちます。5G基地局の高周波電力増幅器やデータセンターの電源モジュール、スマートフォン向け急速充電アダプタに採用が広がっています。シリコン基板上へのエピタキシャル成長(GaN-on-Si)でコストを下げる取り組みも進んでいます。Navitas・GaNSystems・パナソニック・TIなどが製品を展開しています。
GaAs・InP——高周波・光通信の専門材料
GaAs(ヒ化ガリウム)はシリコンより電子移動度が高く、高周波特性に優れます。スマートフォンの高周波フロントエンドモジュール(RF FEM)に広く使われており、Skyworksや村田製作所がGaAsデバイスを製造しています。InP(リン化インジウム)はGaAsよりさらに電子移動度が高く、100Gbps以上の光通信モジュールや光集積回路(PIC)に使われます。どちらも素材コストと量産性でシリコンに劣るため、特殊用途に限定されます。