Si・SiC・GaN・GaAsなど半導体材料の種類と用途の違いは、「半導体基礎:半導体の種類」でまとめています。EV向けパワー半導体や5G向け高周波デバイスへの展開も解説しています。
化合物半導体とは、周期表の2種類以上の元素を組み合わせて作られた半導体材料の総称です。単体半導体であるシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)とは異なり、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、インジウムリン(InP)、リン化インジウムガリウム(InGaP)などが代表例です。
化合物半導体の最大の特長は、シリコンにはない優れた電気・光学特性を持つことです。例えば、GaAsやInPは電子移動度がシリコンの約5〜10倍あり、高速・低雑音な高周波デバイス(スマートフォンのRFフロントエンド、レーダー、通信衛星)に適しています。GaNはワイドバンドギャップ(3.4eV)と高い絶縁破壊電界を持ち、高周波・高出力パワーアンプに使われます。SiCは耐熱・高耐圧特性に優れ、電気自動車のインバーターに採用が急拡大しています。
光デバイス(LED・レーザーダイオード・フォトディテクター)はシリコンでは実現できない直接遷移型バンドギャップを利用するため、GaAs・GaN・InPなどの化合物半導体が使われます。光通信(InP系DFBレーザー)、スマートフォンの顔認証(GaAsベースのVCSEL)、データセンターの光トランシーバーなど幅広く展開されています。
製造プロセスは、シリコン半導体とほぼ同じフォトリソグラフィ・エッチング・成膜工程を用いますが、ウェハは主にGaAs基板(4〜6インチ)、SiC基板(4〜8インチ)、GaN on Si基板などが使われます。エピタキシャル成長にはMOCVD(有機金属気相成長法)やMBE(分子線エピタキシー)が用いられ、Veeco、AIXTRON、東京エレクトロンが主要装置メーカーです。
市場では、GaNパワーデバイスがEV・スマートフォンの急速充電向けに急成長し、SiCデバイスはEVのメインインバーターで採用が加速しています(Infineon、STMicroelectronics、Wolfspeedが主要メーカー)。シリコンの微細化が物理限界に近づく中、化合物半導体の重要性はますます高まっています。