トランジスタと集積回路(IC)の基礎|スイッチの原理からFinFETまで
トランジスタは半導体デバイスの基本素子で、微弱な電圧でより大きな電流をオン/オフするスイッチ・増幅器として機能します。1947年の発明以来、製造技術の進化により1チップあたりのトランジスタ数は数百億個以上に達し、スマートフォンやデータセンターを支えています。現在の主流はMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)で、最先端プロセスではFinFETやGAA(Gate-All-Around)ナノシート構造が採用されています。
ポイント
- ▸MOSFETはゲート電圧でチャネルの電子の流れをスイッチングする3端子素子
- ▸ムーアの法則:トランジスタの集積密度はおよそ2年ごとに倍増
- ▸3nm世代ではGAA(Gate-All-Around)ナノシートが主流構造に
- ▸1チップ(Apple M3)に約350億個のトランジスタが集積
- ▸CMOSはNMOSとPMOSを組み合わせた省電力ロジック回路の基本
MOSFETの動作原理
MOSFETはソース・ドレイン・ゲートの3端子から構成されます。ゲート電極とシリコン基板の間にはSiO₂などのゲート絶縁膜が挟まれており、ゲートに電圧をかけると絶縁膜下のシリコン表面に反転層(チャネル)が形成され、ソースとドレイン間に電流が流れます。ゲート電圧を下げると電流が止まる——これが「スイッチ」として機能するメカニズムです。N型MOSFETとP型MOSFETを組み合わせたCMOS回路が、現代のデジタルロジックの基本です。
FinFETとGAA——微細化の壁を乗り越えた構造革新
チャネル長が10nm以下になるとゲートによる電流制御が難しくなる「短チャネル効果」が顕在化します。これを解決したのが、シリコンを鰭(ひれ)状に立てて3方向からゲートで囲むFinFET構造です。さらに微細化が進む3nm以降では、シリコンナノシートをゲートが完全に囲むGAA(Gate-All-Around)構造が採用されています。GAAは電流制御効率が高く、FinFETより消費電力を抑えながら高い性能を実現します。TSMCとSamsungが3nmプロセスでGAA(ナノシートトランジスタ)を量産中です。
集積回路(IC)とは
集積回路(IC:Integrated Circuit)は、多数のトランジスタや抵抗・配線を一枚のシリコン基板(チップ)上に集積した電子回路です。1958年にジャック・キルビーが発明し、現在では1チップに数十〜数百億個のトランジスタが搭載されます。用途によってCPU・GPU・メモリ・アナログICなどに分類され、設計(ファブレス)と製造(ファウンドリ)が分業する「ファブレスモデル」が主流です。TSMCやSamsungがファウンドリとして世界最先端チップを製造しています。
トランジスタと半導体製造プロセスの関係
トランジスタをウェハ上に作り込む工程が「前工程」です。露光装置でパターンを描き、エッチング装置で不要部分を除去し、成膜装置でゲート絶縁膜や金属配線を積み上げます。1チップには露光だけで数十〜百層以上の重ね合わせ(スタック)が必要で、各工程の精度がトランジスタ性能に直結します。3nm以下では検査・計測装置による工程管理も一段と重要になります。