パワー半導体の基礎(SiC・GaNの特徴・EVへの展開)は「半導体基礎:半導体の種類」で解説しています。Siとの比較表や用途別の使い分けも合わせてご覧ください。
パワー半導体(Power Semiconductor)は、電力の変換・制御・整流を行うために設計された半導体デバイスの総称です。ロジックIC(信号処理)と異なり、大電流・高電圧・高温環境下での動作を前提とし、電気自動車(EV)のインバーター、産業用モーター制御、スイッチング電源、太陽光発電のパワーコンディショナーなど、社会インフラの電力変換に不可欠な存在です。
主要なパワー半導体デバイスには、MOSFET(金属酸化膜電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)、SBD(ショットキーバリアダイオード)があります。シリコン(Si)ベースのIGBTは長年EV・鉄道・産業機器の主力デバイスでしたが、炭化ケイ素(SiC)MOSFETの実用化により、スイッチング損失の大幅低減と高温動作が可能になりました。
SiC(炭化ケイ素)はシリコンの約10倍の絶縁破壊電界と高熱伝導率を持ち、高耐圧・高速スイッチング・高温動作を同時に実現します。テスラがModel 3のメインインバーターにSiC MOSFETを採用して以降、EV向けSiCデバイス需要が急増しています。Wolfspeed、STMicroelectronics、Infineon、Rohmが主要メーカーです。
GaN(窒化ガリウム)は高周波・高出力特性に優れ、スマートフォンの急速充電アダプター(GaN充電器)や5G基地局の電力増幅器、データセンターの電源モジュールへの採用が拡大しています。GaN Systems(Infineonが買収)、VisIC、EPC(Efficient Power Conversion)などが専業メーカーとして知られています。
パワー半導体の製造は、通常のCMOSロジックとは異なる専用プロセスが必要です。SiCウェハ(サブストレート)の製造コストが高く、エピタキシャル成長(MOCVD)の精度が歩留まりに直結します。製造装置では、Veeco(エピ装置)、Axcelis Technologies(イオン注入)、Applied Materials(成膜・エッチング)などが主要サプライヤーです。