チップができるまで|半導体製造の流れを入門向けに解説

半導体チップはシリコンウェハという薄い円盤を出発点として、前工程(ウェハプロセス)と後工程(アセンブリ・テスト)という2段階で製造されます。前工程では露光・エッチング・成膜など数百ステップを経て回路を作り込み、後工程ではウェハからチップを切り出して製品にパッケージングします。ここでは各工程で何をしているかを、装置との対応とともに分かりやすく整理します。

ポイント

  • 製造は「前工程(ウェハプロセス)」と「後工程(パッケージ・テスト)」の2段階
  • 前工程だけで数百ステップ、1枚のウェハが完成まで2〜3ヶ月かかる場合も
  • 露光装置が工程の「心臓部」でパターンの微細さを決める
  • エッチング・成膜・CMP・洗浄・検査・計測が繰り返し組み合わさる
  • 後工程でパッケージに封じることで初めて製品として出荷可能になる

Step 1:設計とマスク製作

まずEDA(電子設計自動化)ツールを使って回路設計を行い、トランジスタや配線のレイアウトデータを作成します。このデータを基にフォトマスク(レチクル)を製作します。マスクはガラス基板上に精細なパターンが描かれた「型」で、後の露光工程でウェハへパターンを転写するために使われます。設計とマスク作成は製造コストと期間の大きな部分を占め、最先端チップのマスクセット費用は数十億円に達します。

Step 2:前工程——ウェハへの回路形成

前工程はシリコンウェハ表面に回路を作り込む工程です。主なステップとして、①成膜(CVD・PVD・ALDで薄膜を堆積)、②フォトレジスト塗布・露光・現像(光でマスクパターンを転写)、③エッチング(不要部分を除去)、④洗浄(汚染・残留物除去)、⑤CMP(Chemical Mechanical Planarization:表面の平坦化)、⑥計測・検査(寸法・欠陥・膜厚を確認)が繰り返されます。この1サイクルで1〜2層が形成され、最先端チップでは合計100層以上を積み上げます。

Step 3:露光——回路を描く最重要工程

露光は前工程の「心臓部」で、光をウェハ上のフォトレジスト(感光性材料)に当ててマスクのパターンを転写します。使う光の波長が短いほど細かいパターンを描けます。現在の主流はArF液浸露光(波長193nm)とEUV露光(波長13.5nm)で、7nm以下の最先端チップにはEUVが不可欠です。ASMLが露光装置の世界最大手で、EUVの量産装置は同社のみが供給しています。露光工程は1チップあたり数十〜百回以上繰り返されます。

Step 4:後工程——パッケージングと試験

前工程が終わったウェハはダイシング装置で個々のチップ(ダイ)に切断されます。次に良品ダイを選別してリードフレームや基板に実装し(ダイボンディング)、ワイヤやバンプで電気的に接続します(ワイヤボンディング/フリップチップ)。その後、樹脂などで封止してパッケージを完成させます。最後に半導体テスト装置(ATE)でIC全数を電気的に試験し、規格を満たすものだけ出荷します。近年は3次元実装(2.5D/3D)など高密度パッケージングが急発展しています。

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よくある質問

半導体チップを作るのにどれくらい時間がかかりますか?
前工程(ウェハプロセス)だけで通常1〜3ヶ月かかります。最先端チップほど工程数が多く期間が長くなります。後工程(パッケージング・テスト)は製品によりますが数週間程度です。設計からマスク作成、前工程・後工程をすべて含めると、量産品でも半年〜1年以上かかることも珍しくありません。
前工程と後工程の違いは何ですか?
前工程(ウェハプロセス)はシリコンウェハ上に回路パターンを作り込む工程で、露光・エッチング・成膜・洗浄・CMP・検査などを繰り返します。後工程(バックエンド)はウェハをチップに切断し、パッケージに封止して電気試験を行う工程です。前工程が「チップを作る」フェーズで、後工程が「製品に仕上げる」フェーズです。
チップの中にトランジスタは何個入っていますか?
最先端チップでは数百億個のトランジスタが集積されています。例えばApple M3チップには約350億個、NVIDIA H100 GPUには約800億個のトランジスタが入っています。1970年代のIntel 4004(約2300個)から50年で約1000万倍に増えた計算です。
半導体工場(ファブ)はどのような環境で作られていますか?
半導体工場の製造エリアは「クリーンルーム」と呼ばれ、空気中の塵や微粒子を極限まで排除した特殊環境です。最先端ラインではISO class 1(1立方メートルあたり粒子0.1μm以上を10個以内に制限)レベルが求められます。また温湿度・振動・電磁波なども厳密に管理されています。
TSMCやSamsungはどんな会社ですか?
TSMCは台湾に本社を置く世界最大の半導体ファウンドリ(受託製造会社)です。AppleやNVIDIAなどの設計専業会社(ファブレス)のチップを製造しています。Samsungは韓国の総合半導体メーカーで、設計と製造の両方を手がけます。どちらも最先端の3nm以下プロセスを量産しています。