ABFフィルム(Ajinomoto Build-up Film)とは、半導体パッケージ基板の絶縁層として使用される味の素ファインテクノ(Ajinomoto Fine-Techno)が開発・製造するエポキシ系の絶縁フィルム材料である。フリップチップBGA(FC-BGA)パッケージ基板のビルドアップ絶縁層として世界的に普及しており、同社が事実上の独占的サプライヤーとして市場をほぼ独占している半導体サプライチェーンの隠れた重要部材である。
ABFフィルムの優れた特性として、①レーザー加工性の高さ(CO₂レーザーによる微細ビア形成が容易)、②低誘電率・低誘電損失(高速信号伝搬に有利)、③低熱膨張率(シリコンチップとの熱膨張率差低減)、④優れた表面粗さ(銅めっき密着性向上)が挙げられる。これらの特性がFC-BGA基板の製造プロセスに最適化されており、代替材料への切り替えが困難な理由となっている。
AI・データセンター向けGPU・CPUの大型FC-BGA基板需要の急増により、2022〜2024年にかけてABFフィルムの供給不足が深刻化した。ABFは食品アミノ酸事業の副産物を活用した製品であり、生産能力拡張には食品事業との資源配分の調整も必要である。Ajinomoto Fine-Technoは2025年以降の設備投資を大幅に拡大して需給逼迫の解消を図っている。
次世代ABF材料の開発方向として、より低誘電率化(Dk 3.0以下)、超微細ビア形成対応(ビア径25μm以下)、および高耐熱化(鉛フリーはんだリフロー対応)が求められている。ガラス基板(Glass Core Substrate)の台頭はABF基板の代替技術として注目されるが、製造プロセスの成熟度とコスト面でABF基板が2030年代前半までは主流を維持すると見込まれている。
ABFフィルムのサプライチェーンリスクは半導体業界全体の課題として認識されている。単一サプライヤー依存(Ajinomoto Fine-Technoが90%以上のシェア)のため、供給障害が生産ライン全体に波及するリスクがある。代替サプライヤーの育成(台湾・韓国の化学メーカーなど)と新材料開発によるリスク分散が業界的な課題となっている。