CD-SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope、臨界寸法測定走査電子顕微鏡)は、半導体製造プロセスにおいて回路パターンの線幅や形状をナノメートルレベルで測定する計測装置です。
SEMは走査型電子顕微鏡の略称で、電子ビームを試料表面に照射し、発生する二次電子を検出して高分解能の画像を取得します。CD-SEMは、Critical Dimension(臨界寸法)という名称が示す通り、デバイス性能を左右する重要な寸法パラメータの測定に特化しており、半導体製造における品質管理の中核を担っています。
CD-SEMの測定原理は、細く絞った電子ビームでウェハ表面を走査(スキャン)することに基づいています。電子ビームの加速電圧は通常500V~5kVの範囲で、光学顕微鏡をはるかに超える数ナノメートルレベルの観察が可能です。試料表面の形状や材質によって二次電子の放出量が変化するため、その情報から高精細な画像を得られます。得られた画像は専用の画像処理アルゴリズムで解析され、ライン幅やスペース幅などの寸法が自動的に測定されます。
主な測定項目として、ライン幅(Line Width)、スペース幅(Space Width)、ホール径(Hole Diameter)などの基本寸法があります。さらに、トレンチ深さ(Trench Depth)、側壁角度(Sidewall Angle)といった立体形状の評価も可能です。特に重要なのがラインエッジラフネス(LER)とラインウィドゥスラフネス(LWR)の測定で、これらはパターンの微細化に伴いデバイス特性のばらつきに大きく影響するため、厳密な管理が求められています。
半導体製造では、CD-SEMが複数の工程で活躍します。まず露光工程後には、フォトレジストパターンの線幅を測定し、露光装置の焦点や露光量が適切かを確認します。次にエッチング工程後では、実際のシリコンやメタル層のパターン寸法を測定し、エッチング条件の最適化に活用します。成膜工程後には、膜厚の均一性や段差部での被覆性を評価します。このように各工程の品質を確認する上で、CD-SEMは欠かせない存在となっています。
測定結果はAPC(Advanced Process Control、高度プロセス制御)システムにフィードバックされます。APCは測定データをリアルタイムで解析し、製造装置のプロセス条件を自動調整することで、プロセスのばらつきを最小化します。例えば、ライン幅が設計値より太いと判定された場合、露光装置の露光量を微調整したり、エッチング装置のエッチング時間を延長したりします。このフィードバックループにより、高い歩留まりと安定した製品品質が実現されています。
先端半導体製造では、極めて厳しい精度が要求されます。3nmプロセスノード以下では、1nm以下の精度での寸法管理が必要です。このため、CD-SEMには高い測定再現性(Repeatability)と測定精度(Accuracy)が求められます。測定再現性は通常0.1nm(3σ)以下、つまり同じパターンを何度測定してもほぼ同じ値が得られることが必要です。これを実現するため、装置の機械的安定性、電子光学系の精密制御、画像処理アルゴリズムの高度化など、多方面での技術革新が続いています。
測定速度の向上も重要な課題です。製造ラインでは一日に数百枚から数千枚のウェハが処理されるため、測定時間の短縮が生産性に直結します。従来のシングルビームCD-SEMでは測定速度に限界がありましたが、近年開発されたマルチビームSEM技術により状況が変わりつつあります。マルチビームSEMは、9本や49本といった複数の電子ビームを並列使用することで、測定速度を大幅に向上させます。これにより、より多くの測定点でプロセス管理が可能になっています。
機械学習とAI技術の応用も進んでいます。従来の画像処理はルールベースの手法が主流でしたが、パターンの複雑化や材料の多様化により、正確な測定が困難なケースが増えています。機械学習を活用することで、大量の測定データから最適な測定条件やエッジ検出パラメータを自動学習し、測定精度と再現性を向上させることができます。異常パターンの自動検出や測定結果の品質評価にもAI技術が活用されています。
今後の技術方向性として、さらなる高精度化と高速化が挙げられます。2nmノード以降の極限微細化プロセスでは、サブナノメートルレベルの寸法管理が必要となります。また、3D NANDフラッシュメモリのような三次元デバイスでは、深い穴やトレンチの内部形状を測定する技術が求められており、従来の表面観察とは異なる測定手法の開発が進められています。CD-SEMは半導体製造の微細化を支える基盤技術として、今後も重要性を増していくと考えられます。