サリサイド(SALICIDE:Self-Aligned Silicide)とは、トランジスタのポリシリコンゲートおよびソース/ドレイン領域に自己整合的にシリサイド(金属とシリコンの化合物)を形成し、コンタクト抵抗と配線抵抗を低減する技術である。「自己整合的」とはフォトリソグラフィーのマスク工程なしに、スペーサーで保護されたゲート側壁以外の露出シリコン面にのみシリサイドが形成されることを指す。
SALICIDEの代表的なプロセスは、①コバルト(Co)またはニッケル(Ni)などの遷移金属のスパッタ成膜、②熱処理による金属とシリコンの反応(第一アニール)、③未反応金属の選択エッチング除去、④第二アニールによる低抵抗相への相変換、の4工程で構成される。現在の主流はNiSi(ニッケルシリサイド)で、低温形成・低抵抗・微細加工適性に優れる。
シリサイド材料の変遷はプロセスノードとともに進化した。初期はTiSi₂(チタンシリサイド)が主流であったが、微細化に伴う凝集問題からCoSi₂(コバルトシリサイド)が採用された。さらに45nm世代以降はNiSiが標準となり、現在は白金(Pt)添加ニッケルシリサイド(NiPtSi)が熱安定性向上のために使われている。
FinFETプロセスでは、Fin上面と側面のシリサイド形成が三次元形状であるため、従来のプレーナ型と比べてシリサイド形成の均一性確保が難しくなっている。特にFinの根元(STIに近い部分)でのシリサイド過形成がリーク電流を引き起こすため、熱処理条件の精密制御が求められる。
GAA(Gate-All-Around)構造への移行後、ソース/ドレイン部のエピタキシャル成長シリコンゲルマニウム(SiGe)とのシリサイド接触が新たな課題となっている。また、コンタクト抵抗をさらに低減するため、シリサイドなしにルテニウム(Ru)や半金属ビスマス(Bi)系材料を直接接触させるオーミックコンタクト技術の研究も進んでいる。Applied Materialsがこの領域で積極的な製品開発を行っている。