SiC(炭化ケイ素、Silicon Carbide)は、シリコン(Si)と炭素(C)で構成されるIV-IV族化合物半導体で、ワイドバンドギャップ(4H-SiCで3.26eV)・高い絶縁破壊電界(約3MV/cm)・高い熱伝導率(約5W/cm·K)・高い電子飽和速度を持つ優れたパワー半導体材料です。同じ耐圧設計のシリコンデバイスと比べて、オン抵抗を1/300以下に低減できることが最大の特徴です。
SiC MOSFETは電気自動車(EV)のメインインバーター(バッテリーからモーターへの電力変換)として急速に採用が拡大しています。Tesla Model 3のメインインバーター(ST Microelectronics製SiC)が象徴的で、EVの航続距離延長・充電効率向上に貢献しています。現在、Wolfspeed(旧Cree)・STMicroelectronics・Infineon・Rohm・ONsemiが主要SiCデバイスメーカーとして市場を競います。
SiCウェハ(基板)製造は特殊な技術が必要です。シリコンのように融点から引き上げるCZ法が使えないため、PVT(Physical Vapor Transport:昇華法)により1800〜2400℃という高温で数週間かけて単結晶インゴットを成長させます。大口径化(4インチ→6インチ→8インチ)が進んでいますが、欠陥(マイクロパイプ、転位)密度の低減と歩留まり向上が課題です。
SiCデバイス製造では通常のシリコンプロセスとは異なる技術が必要です。SiCのイオン注入は高温(500〜1000℃)での注入と超高温(1600℃以上)のアクティベーションアニールが必要です。SiCの熱酸化膜(SiO₂)の界面品質はシリコン酸化膜より劣るため、界面パッシベーション(NO・N₂O雰囲気アニール)が不可欠です。
市場成長の観点では、2023〜2030年のSiCデバイス市場は年率30%超での成長が予測されており、EV・産業用モーター・PV(太陽光)インバータ・充電インフラ向け需要が急増しています。Wolfspeed・STMが大規模なSiCファブ増設を進めており、製造装置ではAxcelis(イオン注入)、Applied Materials(CVD/PVD/エッチング)、Veeco(エピ装置)が主要サプライヤーです。