イオン注入(Ion Implantation)は、不純物元素(ドーパント)をイオン化してウェハに高エネルギーで照射し、シリコン結晶内の特定の深さにドーパントを導入するプロセスです。PN接合形成、ソース・ドレイン拡散層形成、ウェル形成、閾値電圧(Vth)調整など、MOSFETの電気特性を決定する最重要工程の一つです。
イオン注入装置は、ドーパント元素を含むガス(BF₃、PH₃、AsH₃など)を電離させてイオン化し、質量分析磁石で目的のイオンを選別した後、加速電極で数keV〜数MeVに加速してウェハに照射します。イオンのエネルギー(=注入深さ)とドーズ量(照射量:atoms/cm²)を独立に精密制御できることがイオン注入の最大の利点で、熱拡散法よりはるかに高精度です。
主なドーパントはP型のボロン(B、BF₂⁺)、N型のリン(P)・ヒ素(As)・アンチモン(Sb)です。注入エネルギーによって注入深さ(Rp:平均射程)が決まり、ドーズ量が最終的なドーパント濃度を決定します。注入後にはアニール処理によって結晶ダメージを回復させ、ドーパントを電気的活性位置(置換位置)に配置します。
先端ロジック(3〜5nm)では、浅接合形成(Junction Depth<10nm)に極低エネルギー注入(<1keV)が必要です。また、FinFET・GAAの3D構造では、フィン側壁へのイオン注入角度制御(チルト注入)や、プラズマドーピング(PLAD)・原子層ドーピング(ALD型)などの新技術が採用されています。
主要装置メーカーはAxcelis Technologies(NovaStar、Purion系)が世界最大シェアを持ち、Applied Materials(VIISta系)、Sumitomo Heavy Industries(住友重機械)、日新電機(SEN)などが続きます。注入精度の向上(角度偏差・ドーズ均一性)、スループット改善、極低エネルギー領域への対応が各社の技術競争軸です。