ゲルマニウムチャネルトランジスタ(Germanium Channel Transistor)とは、従来のシリコン(Si)に代えてゲルマニウム(Ge)をトランジスタのチャネル材料として使用する次世代デバイス技術である。ゲルマニウムはシリコンに比べて電子移動度(約2倍)およびホール移動度(約4倍)が高く、同じ供給電圧でも高速・低電力動作が可能なため、特にPMOSトランジスタの高性能化に有効な材料として研究が進んでいる。
ゲルマニウムチャネルの製造における課題として、①シリコン基板との格子不整合(4%)によるミスフィット転位の発生、②GeO₂ゲート酸化膜の熱的不安定性(Geは低温で酸化膜が分解しやすい)、③p型不純物(ボロン)の急峻接合形成の難しさ、が挙げられる。これらの課題に対し、High-k/Metal Gateとの組み合わせやSi₁₋ₓGeₓ(SiGe)バッファ層技術が解決策として研究されている。
現在の先端FinFETプロセスでは、PMOSのチャネルにSiGe(Ge組成30〜50%)を選択的に使用するハイブリッド基板(SiGe-on-Insulator)アプローチが実用化されている。TSMCのN3/N2プロセスでは、ナノシートGAAのPMOS側チャネルにSiGeが採用されている。次世代としてGe組成をさらに高めた、あるいは純Geチャネルへの移行が2nm以降で検討されている。
ゲルマニウム上のHigh-kゲート絶縁膜形成は重要な研究テーマである。GeとSiO₂/High-kの界面準位密度はSiと比べて高く、閾値電圧の安定性に影響する。GeO₂のパッシベーション技術や、界面にSi層を薄くはさんでからHigh-kを堆積するSi-passivation技術が開発されている。Applied Materialsは次世代チャネル材料対応の成膜・エッチング装置を展開している。
将来的にはGAA(Gate-All-Around)ナノワイヤ・ナノシート構造でのGe/SiGeチャネル採用が2nm以降の先端ノードで本格化すると予測されている。また、III-V族半導体(InGaAs等)とGeを組み合わせたCMOS構造(NMOSにInGaAs、PMOSにGe)は「将来のCMOS」として研究されており、IntelやIMEC(ベルギー)が先行研究をリードしている。