TSMC N2(N2プロセス)は、TSMCが2025年に量産を開始した2nmクラスのロジックプロセスノードです。FinFETからGAA(Gate-All-Around)ナノシートトランジスタへの全面移行を初めて採用し、N3E比でトランジスタ密度が約15%向上・同消費電力比で10〜15%の速度向上・同速度比で25〜30%の消費電力削減を実現します。Apple A19(iPhone 17向け)・Apple M5シリーズがN2の主要採用製品として報じられています。
N2の技術的特徴はGAAナノシートトランジスタの量産適用にあります。シート状の超薄型シリコンチャネル(ナノシート、厚さ5〜6nm)をゲート電極が四方から囲む構造で、FinFETが抱えていた短チャネル効果を大幅に抑制します。N2ではBSPDN(裏面電源供給ネットワーク)は非搭載ですが、派生版であるN2Pでは一部採用される予定です。EUV露光の適用レイヤーは大幅に増加しており、ASMLのEUV装置が1ウェハ当たり最多レイヤー数使用するプロセスの一つです。
TSMCのN2ロードマップは複数バリアントで構成されます。N2(標準版、2025年量産):モバイル・PC向けの最初の2nmプロセス。N2P(P:Performance強化、2026年):性能優先版、高クロック動作が必要なHPC・AI向け。N2X(X:eXtreme、2026年以降):高電圧動作対応、電源ICやI/O向け。A16(2026年):N2P+BSPDNを組み合わせた超高性能プロセス、Intelのような高性能ロジック向け。各バリアントで装置レシピと工程数が異なり、TEL・Lam・Applied Materialsへの追加需要を生みます。
N2の量産立ち上げは台湾新竹のFab20・Fab25が中心で、熊本第2工場でも一部量産が計画されています。N2ウェハの基本価格はN3Eの1.3〜1.5倍と推定され、TSMCの平均販売単価(ASP)を押し上げる高付加価値プロセスです。TSMC全体のN2ウェハ生産能力は2025年末時点で月産3〜5万枚、2026年末に向けて10万枚超への拡張が計画されており、EUV露光装置・ALD/CVD装置・CMPツールへの大規模追加投資を伴います。
N2の顧客争奪戦は激しく、Apple・NVIDIA・AMD・Qualcomm・MediaTekがN2ウェハの確保を競っています。N2の成功はTSMCの2025〜2027年の収益成長の柱であり、Samsungがファウンドリ顧客獲得に苦戦する中、TSMCのN2独走がファウンドリ市場シェアをさらに拡大させる要因となっています。N2の歩留まりランプアップ速度が、AIチップ・スマートフォン向けSoCの供給安定性を左右する重要指標として業界に注目されています。