ペリクルはフォトマスクにパーティクルが付いても焦点外し効果で転写を防ぐ薄膜保護部品。DUV用は高透過率フッ素樹脂膜(信越化学が世界最大手)。EUVペリクルはSi/CNT/SiC膜で透過率90%超・高耐久性が課題。三井化学・旭化成・SKエレクが開発中。
ペリクル(Pellicle)とは、フォトマスク(レチクル)の表面をパーティクル(微細粒子)から保護するために貼付する薄い透明膜(メンブレン)とその支持フレームから構成される保護部品です。ペリクルがなければマスク表面に付着したパーティクルが露光時にウェハ上に転写され(パーティクルの影がウェハに投影され)、パターン欠陥(露光不良)の原因となります。ペリクルはパーティクルをマスク表面から離れた位置に保持し、焦点外し(デフォーカス)することで転写像への影響をなくします。
ペリクルの動作原理は「フォーカス外し効果」にあります。ペリクルメンブレンはマスク表面から数mm(通常4〜6mm)離れた位置に張られています。露光光学系はマスク表面の回路パターンにフォーカスを合わせているため、ペリクル表面に付着したパーティクルは焦点から外れ(デフォーカスされ)、ウェハ上ではぼけた薄い影になって転写への影響が無視できる程度になります。この原理は波長に依存しないため、i線からKrF・ArFまでのDUVリソグラフィで有効です。
DUV用ペリクル(ArF・KrF向け)は、ニトロセルロース・フッ素系樹脂(テフロン系)などの高透過率フィルム(透過率>99%)が使われます。フレームはアルミ合金製で、マスクに粘着剤で貼り付けます。主要メーカーは信越化学工業(シンエツペリクル:業界最大手)・三井化学・旭化成・FST Corporation(台湾)・Micro Lithography(米国)です。日本ペリクルメーカーが世界市場のシェア過半数を持ちます。
EUVペリクルの課題:EUV光(13.5nm)は非常に強いエネルギーを持ち、また大気に強く吸収されるため、EUV用ペリクルには全く異なる材料が必要です。DUV用の樹脂膜はEUVで劣化・燃焼するため使えません。EUVペリクルに必要な特性は①高EUV透過率(>90%:透過率が低いとウェハへの露光光量が減りスループット低下)、②EUVパワー(200〜500W級)への耐性(燃焼・変形せず)、③パーティクルバリア機能の維持、です。現在はポリシリコン(多結晶Si)膜・カーボンナノチューブ(CNT)膜・シリコンカーバイド(SiC)膜などが研究開発されています。
EUVペリクルの開発動向:ASML・Imec・三井化学(旭化成製CNTペリクル)・SKエレクトロニクスなどがEUVペリクルの実用化に取り組んでいます。2023〜2025年時点でペリクルなしのEUV量産が多くのファブで行われており、ペリクルなし運用はマスク交換頻度の増加とコスト増大をもたらします。TSMC・Samsung・インテルではEUVペリクルの早期実用化を求めており、透過率92%以上・耐久1000時間超を目標とした開発が続いています。