GLOSSARY

レチクル(フォトマスク)とは

Reticle / Photomask
最終更新:2026-08-02露光装置マスク製造装置

レチクル(フォトマスク)とは?

レチクル(フォトマスク)とは、回路パターンをウェハに転写するための原板です。石英基板上にクロムや位相シフト材料でパターンを描画し、露光装置がこれを一般に1/4へ縮小投影します。1枚のレチクルが1つの配線層に対応するため、先端チップの製造には数十〜百枚以上が必要で、EUV用は反射型でペリクルの扱いも異なります。

定義・解説

レチクル(Reticle)とは、半導体リソグラフィで使用されるフォトマスクの一種であり、回路パターンをウェハに転写するための「原板」です。石英(SiO₂)基板上にクロム(Cr)または位相シフト材料で回路パターンを描画したもので、露光装置がウェハ上に縮小投影(一般的に4倍縮小、4×レチクル)します。1枚のレチクルには1世代分の配線層パターンが含まれ、先端チップの製造には数十〜百枚以上のレチクルが使われます。

レチクルの製造プロセスは「電子ビーム(EB)描画」→「現像・エッチング」→「検査・修正」→「洗浄」の流れで行われます。EB描画にはNuflare Technology(ニューフレアテクノロジー)やJEOL製のマスク描画装置が使用されており、Nuflareは世界シェア80%超の圧倒的な市場地位を持ちます。描画後の欠陥検査にはLasertec(レーザーテック)のマスク検査装置が使われ、特にEUVマスク向けの「Actinic(実波長)検査機」はLasertecが世界唯一の供給メーカーです。

EUVレチクルはDUVレチクルと根本的に構造が異なります。DUVレチクルが透過型(光を通す)なのに対し、EUVレチクルは反射型で、Mo/Si多層膜ミラー基板上にRu・TaN吸収体パターンが形成されます。また、EUVは大気中の酸素・水分でも吸収されるため、搬送・保管には専用のEUVレチクルポッド(EUVRルクル対応SMIF)が使用されます。EUVレチクルのブランクス製材は信越化学・SKエレクトロニクスが主要サプライヤーです。

OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)はレチクルパターン設計の重要技術です。光の回折・干渉により実際の転写パターンが設計値からずれる「光近接効果」を補正するため、レチクル上のパターンをあらかじめ意図的に変形させます。先端ロジックでは数十億個以上のOPC補正点があり、EDA(電子設計自動化)ツールによる高性能計算が必要です。InverseリソグラフィーやAI活用OPCなど新手法の研究も進んでいます。

レチクルの管理・保護も半導体製造の重要課題です。ペリクル(Pellicle)と呼ばれる薄膜保護フィルムをレチクル表面に取り付け、パーティクル付着によるパターン欠陥を防ぎます。DUV用ペリクルは比較的容易に製造できますが、EUV用ペリクルはEUV光の高透過率(90%以上)と耐熱・耐久性の両立が困難で、三井化学・旭化成・ASMLが開発を競っています。

よくある質問(FAQ)

レチクルとフォトマスクの違いは何ですか?
厳密には、ウェハ全面のパターンを1:1で持つものをフォトマスク、一部の領域(ショット)を縮小投影するものをレチクルと呼びます。現在の縮小投影露光ではほぼすべてレチクルが使われるため、実務上は両者がほぼ同義で使われています。
レチクルは1枚いくらくらいしますか?
成熟ノード向けの単純なレチクルは数十万円程度ですが、先端ロジック向けの位相シフトマスクやOPCを施したものは1枚数千万円、EUV用レチクルはさらに高価です。先端チップ1製品には数十〜百枚以上のレチクルセットが必要で、合計では数億〜数十億円規模になります。
EUVレチクルは従来のレチクルと何が違いますか?
EUV光はあらゆる物質に吸収されるため、光を透過させる従来型ではなく、多層膜ミラーで反射させる反射型マスクになります。Mo/Siの多層膜を約40〜50ペア積層した上に吸収体でパターンを描き、扱いも真空中に限られます。ペリクルも透過率と耐熱性の両立が難しく、EUV固有の課題です。

設備の製造メーカー

レーザーテック日本

EUVマスク欠陥検査装置で世界唯一のサプライヤー。半導体・FPD向け検査・計測装置の専業メーカーとして、マスク…

企業詳細を見る →
ニューフレアテクノロジー日本

半導体マスク(レチクル)製造用の電子線(EB)描画装置の世界最大手。浜松ホトニクスグループ。EUV対応マスクブ…

企業詳細を見る →
ASMLオランダ

EUV露光装置の唯一のグローバルサプライヤー。極紫外光リソグラフィ技術でムーアの法則を延命させ、5nm以下の先…

企業詳細を見る →
信越化学工業日本

シリコンウェハ・フォトレジスト材料・塩化ビニルの世界的大手。半導体向けには300mmウェハとEUVレジスト材料…

企業詳細を見る →
エリオニクス日本

電子ビーム(EB)描画装置の専業メーカー。研究開発用途から微細加工向けまで、高分解能なEBリソグラフィ装置を国…

企業詳細を見る →
ニューフレアテクノロジー日本

電子ビーム(EB)マスク描画装置の世界的大手メーカー。東芝グループ発で、フォトマスク製造に不可欠なEB描画装置…

企業詳細を見る →
ヴィステック(Vistec Electron Beam)ドイツ

電子ビーム(EB)マスク描画装置のドイツ発専業メーカー。フォトマスク製造向けの高精度EB描画装置を、研究開発か…

企業詳細を見る →

関連カテゴリ

露光装置
マスク製造装置
マスク描画装置(EB描画)

関連用語

フォトマスクとは →OPC(光近接効果補正)とは →EUV(極紫外線)とは →EUV露光とは →マルチパターニングとは →アクティニック検査とは →マスク検査とは →液浸露光(ArF液浸リソグラフィ)とは →EUVペリクルとは →EUV光源とは →

同じトピックの用語

EUV露光・リソグラフィ のトピックで関連する用語です。

DUV露光とは →i線ステッパーとは →フォトレジストとは →コーター/デベロッパとは →High-NA EUV露光とは →ナノインプリントリソグラフィ(NIL)とは →

同じトピックの企業

キヤノン(Canon)日本カール・ツァイスSMT(Carl Zeiss SMT)ドイツコーニング・トロペル(Corning Tropel)米国

比較・違いを学ぶ

EUV露光装置とDUV露光装置の違い
いずれもフォトレジスト上に回路パターンを転写する露光装置ですが、光源の波長と装置構成が根本的に異なります。EUVは13.5nmの極紫外線で単一露光による微細化が
High-NA EUVと従来EUVの違い(NA=0.55 vs NA=0.33)
EUV露光装置は現在、「従来EUV(NA=0.33、ASMLのNXEシリーズ)」と「High-NA EUV(NA=0.55、ASMLのEXEシリーズ)」の2世代
ArF露光とKrF露光の違い(DUV露光装置比較)
ArFとKrFはどちらもDUV(深紫外線)エキシマレーザーを光源とするフォトリソグラフィ装置ですが、光源波長が根本的に異なります。ArF(フッ化アルゴン)は19
シングルパターニングとマルチパターニングの違い
露光装置の解像度には物理的な限界(回折限界)があり、1回の露光ではそのままでは形成できない微細パターンを実現するために開発されたのがマルチパターニング技術です。
ナノインプリントとEUVの違い(次世代リソグラフィ比較)
ナノインプリントリソグラフィ(NIL)とEUV露光はいずれも半導体製造における微細化を実現するリソグラフィ技術ですが、パターン転写の原理が根本的に異なります。E
ポジ型レジストとネガ型レジストの違い(フォトレジストの比較)
フォトレジストは露光で溶解特性が変化する感光性材料で、ポジ型は露光部が現像液に溶け(マスクの透過部がパターンとして残る逆)、ネガ型は露光部が硬化して残り未露光部
← 用語集に戻る