EUVペリクル(EUV Pellicle)とは、EUV(極端紫外線)リソグラフィー用フォトマスクを異物汚染から保護するために、マスク表面から数mmの距離に張られる薄膜保護膜(メンブレン)である。パーティクルがマスク面から離れた位置(ペリクル面)に付着するようにすることで、露光時の焦点面(マスクパターン面)からデフォーカスされ、ウェーハ上への転写を防ぐ機能を持つ。DUVリソグラフィーでは確立された技術だが、EUV光に対応するペリクルの実用化は困難な技術課題であった。
EUVペリクルの最大の技術難題は、13.5nmのEUV光に対する高い光透過率と、露光装置内の真空・高エネルギー環境に耐える機械的・熱的強度の両立にある。EUV光は物質に強く吸収されるため、ペリクル膜厚はナノメートルオーダー(20〜100nm)に制限される。一方、高圧のスキャナー環境下での機械的強度確保も必要であり、材料選定が極めて困難である。
EUVペリクル材料としてはポリシリコン(poly-Si)や窒化シリコン(SiN)、CNT(カーボンナノチューブ)などが研究されてきた。ASMLはPE Films(現・ASML子会社化)と共同でCNTペリクルの開発を進め、2023年に量産向け供給を本格化した。透過率は現状85〜90%水準で、さらなる透過率向上(>90%)が開発目標となっている。
ペリクルなし運用(Pellicle-Less)では、マスク検査・クリーニング頻度の増加が必要となりスループットが低下する。EUVスキャナーの稼働率向上のためにはペリクルの使用が不可欠であり、High-NA EUV世代ではより高い透過率と耐久性が要求される。JSRはEUVペリクル材料(前駆体・膜形成材料)の開発に取り組んでおり、エンテグリスも高純度材料供給で参画している。
EUVペリクル市場は現在急速に成長しており、2024〜2025年以降のEUV量産ライン拡大に伴い需要が増加している。ペリクルの損傷検査や交換サイクル管理もマスクショップ運営の重要業務となっている。High-NA EUV(NA=0.55)移行時には、より大きなマスクフィールドと新しい光学系に対応した次世代ペリクルの開発も同時進行している。