SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

ALDとPVDの違い(原子層成膜 vs スパッタ成膜)

ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)とPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)は、どちらも半導体製造で広く使われる成膜技術ですが、原理・特性・適用膜種が大きく異なります。ALDは化学的な自己制限反応で1原子層ずつ堆積し、極薄膜(1〜数nm)と高アスペクト比構造の均一被覆に優れます。PVD(スパッタリング)は物理的に金属原子を叩き出し基板に付着させ、金属膜の純度と高スループットに強みがあります。銅(Cu)配線プロセスではALDとPVDが同じチャンバーツール内で連続使用されます。

最終更新: 2026-08-02

結論:ALD(原子層堆積)PVD(スパッタリング)の違いは?

ALDとPVDの最大の違いは「化学的な自己制限反応か物理的なスパッタか」です。ALDは前駆体の自己飽和吸着を繰り返してÅ精度で成膜し、アスペクト比50:1超のビア底部まで均一に覆えるため極薄バリア膜に最適です。PVDはArイオンでターゲットを叩き出す物理成膜で、段差の側壁が薄くなりやすい反面、高純度の金属膜を高スループットで形成できます。銅配線工程では両者が同一ツール内で連続使用されます。

比較表

ALD(原子層堆積)PVD(スパッタリング)
ALD(原子層堆積)PVD(スパッタリング)観点別比較
観点ALD(原子層堆積)PVD(スパッタリング)
成膜の原理気相前駆体の自己制限的表面化学反応(パルス供給・自己飽和)固体ターゲットにArイオンを衝突させ、弾き飛ばした原子を基板に堆積
段差被覆性高アスペクト比(>50:1)でも均一被覆。3D構造・ビア底部まで均等Line-of-sight成膜。段差の側壁・底部が薄くなりやすい(IMPで改善可)
膜厚制御精度GPC×サイクル数でÅ〜サブnm精度制御(0.5〜2Å/cycle)成膜時間・スパッタパワーで制御。通常数nm以上から
成膜温度Thermal-ALD:150〜400°C。PEALD:室温〜200°C室温〜200°C(低温成膜が得意。金属膜を低温で形成可)
膜の組成・純度前駆体・反応ガスの選択で多元素膜も対応。膜中にC・H等の不純物が残ることもターゲット組成に近い高純度膜。合金ターゲットで合金膜も可能
適用膜種HfO₂・Al₂O₃(ゲート絶縁膜)・TiN・TaN(バリア)・ZrO₂・La₂O₃・3D NANDセル間絶縁膜TaN・Ta(Cuバリア)・Cuシード層・Ti・TiN・Al・磁性膜(MRAM:CoFeB等)
スループット低〜中(薄膜前提。サイクル数が多い厚膜は時間がかかる)高(数十〜数百nm/min。高速成膜が可能)
代表装置メーカーASM International・Applied Materials(Olympia ALD)・Lam Research・TELApplied Materials(Endura)・ULVAC・Canon Anelva・芝浦メカトロニクス

銅配線プロセスでのALDとPVDの協働

先端ロジックの銅(Cu)多層配線プロセス(Damascene)では、ALDとPVDが同じ統合クラスタツール内で連続使用されます。典型的なフローは:①TaN拡散バリア(ALD:2〜5nm)→②Taライナー(PVDスパッタ:5〜10nm)→③Cuシード層(PVDスパッタ:20〜50nm)→④Cu電気めっき(ECD)→⑤CMPです。ALDのTaNバリアは高アスペクト比のビア底部まで均一被覆し、PVDのTaライナーはCuとの密着性を高め、PVDのCuシードは電気めっきのベースとなります。

ゲートスタックにおけるALDの優位性

MOSFETのゲートスタック(High-k/Metal Gate:HKMG)ではALDが必須技術です。ゲート絶縁膜のHfO₂(EOT:1nm以下を目標)はALDで形成することで、原子層レベルの膜厚制御と均一性を実現します。ゲートメタル(TiN:数nm)もALDで成膜することで、フィン(FinFET)やシート(GAA)の三次元形状を均一に覆えます。PVDスパッタでは膜厚均一性とコンフォーマル性の点でこれらの要求を満たせません。

MRAMにおけるPVDの優位性とALDの挑戦

MRAM(Magnetoresistive RAM)の磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)はCoFeB/MgO/CoFeBという数nm〜数十nmの積層構造で、磁性膜の組成・結晶性・界面制御が性能を決定します。この用途ではPVD(スパッタリング)の組成制御性と高純度膜形成が不可欠です。一方でMTJのバリア絶縁膜(MgO:1〜2nm)の均一性向上にALDの適用研究も進んでいます。

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よくある質問

ALDとPVDの最大の違いは何ですか?
最大の違いは成膜メカニズムと段差被覆性です。ALDは化学的な自己制限反応でÅ精度の極薄均一膜を形成し、高アスペクト比の3D構造でも均一被覆できます。PVD(スパッタリング)は物理的に金属原子を基板に堆積させ、高純度の金属膜を高速成膜できますが、Line-of-sightの性質から深い溝・穴の均一被覆は苦手です。用途は補完的で、ゲート絶縁膜・薄バリアにはALD、金属配線シードや厚いバリア層にはPVDが使われます。
バリアメタルはALDとPVDどちらで成膜しますか?
銅配線のバリアメタル(TaN/Ta)では両方が使われます。高アスペクト比ビアの底部・側壁を均一に覆う薄いTaNバリア(2〜5nm)にはALDが使われ、その上に密着性と信頼性を高めるTaライナー(5〜10nm)をPVDスパッタで成膜するのが先端ロジックの標準プロセスです。ALD単独でもバリア機能は満たせますが、PVDとの組合せが信頼性面で優れるとされます。
ALDでPVDを置き換えられますか?
一部の膜種ではALDがPVDを置き換えつつありますが、完全な代替は難しい状況です。薄いバリアメタル(TaN:2〜5nm)ではALDへの移行が進んでいます。しかし厚い金属膜(Cuシード:20〜50nm)・磁性膜(MRAM)・Al配線では、PVDの高スループット・高純度・組成制御性が不可欠です。ALDはゲート絶縁膜・極薄バリア・キャップ膜など精密膜形成に特化し、PVDは金属膜の量産成膜に特化するという棲み分けが続いています。
PVD(スパッタリング)でゲート絶縁膜(High-k)は成膜できますか?
技術的には可能ですが、先端デバイスでは採用されていません。High-k絶縁膜(HfO₂:EOT<1nm)はÅ単位の膜厚均一性と3D形状(FinFET・GAA)の均一被覆が必須で、PVDのLine-of-sightではこれを満たせません。またPVDはスパッタリングによる基板へのプラズマダメージが懸念され、ゲート絶縁膜の信頼性(Vth変動・TDDB等)に影響します。そのためゲート絶縁膜はThermal-ALD(150〜350°C)が標準です。
ALDの代表装置とPVDの代表装置を教えてください。
ALD装置:ASM International(EmeraldシリーズでALD市場最大手)・Applied Materials(Olympia ALD)・Lam Research・TEL。PVD装置:Applied Materials(Endura PVD:Cu配線バリア/シードで世界最大シェア)・ULVAC(日本)・Canon Anelva(日本)・芝浦メカトロニクス(日本)。銅配線の統合クラスタ(バリアALD+シードPVD)ではApplied MaterialsがEndura+Olympia ALDの組合せで高いシェアを持ちます。
ALDとPVDはどちらが装置コストが高いですか?
一般にALD装置のほうが高価な傾向があります。ALD装置(枚葉式)は精密な前駆体制御・パージ機構・高精度ガス切替が必要で10〜30億円以上とされます。PVDスパッタ装置はチャンバー数・ターゲット数により異なりますが、5〜20億円程度が多いです。ただしApplied MaterialsのEndura(マルチチャンバー統合型)などの高機能PVD装置は20億円超になるケースもあります。

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