結論:PECVD(プラズマCVD)とLPCVD(低圧熱CVD)の違いは?
PECVDとLPCVDの最大の違いは「反応を起こすエネルギー源」です。PECVDはRFプラズマでガスを活性化するため150〜450°Cの低温で成膜でき、金属配線後(BEOL)の絶縁膜形成に使えます。LPCVDは熱エネルギーのみで反応させるため400〜900°Cの高温が必要ですが、膜密度が高く水素含有量の少ない高品質膜が得られ、前工程(FEOL)のpoly-SiやSi₃N₄形成に使われます。
比較表
| 観点 | PECVD(プラズマCVD) | LPCVD(低圧熱CVD) |
|---|---|---|
| 活性化エネルギー源 | RFプラズマ(13.56 MHz)またはマイクロ波・ICP | 熱エネルギーのみ(電気炉・ランプ加熱) |
| 成膜温度 | 150〜450°C(金属配線後の低温工程に対応) | 400〜900°C(poly-Si・Si₃N₄等は600〜800°C) |
| 真空圧力 | 0.1〜10 Torr(プロセスにより異なる) | 0.1〜2 Torr(LPCVDはより低圧で均一成膜) |
| 膜質(密度・水素) | 成膜温度が低いため膜密度はやや低め。Si-H・N-H結合(水素)を含みやすい | 高温成膜で膜密度が高く、水素含有量が少ない高品質膜 |
| 膜の応力 | RF周波数・パワー・圧力で圧縮〜引張を調整可能 | 温度プロファイルで制御。引張応力膜が多い傾向 |
| ウェハ処理方式 | 枚葉(シングルウェハ)または小バッチ。クラスタツール構成が多い | 縦型炉で大バッチ(25〜200枚/炉)。スループットはウェハ単位では高い |
| 代表的な適用膜種 | TEOS-SiO₂(ILD)・SiN(エッチングストップ)・SiC・SiOC(Low-k ILD)・a-Si | 高品質Si₃N₄・poly-Si・TEOS-SiO₂(STI)・WSi₂(ポリサイド) |
| 代表装置メーカー | Applied Materials(Producer/Precision 5000)・Lam Research・TEL(Trias)・Novus | Kokusai Electric(旧日立国際電気)・TEL(Alpha-8S)・ASM International・Centrotherm |
PECVDが金属配線後に不可欠な理由
半導体の多層配線構造(BEOL:Back-End-of-Line)では、アルミニウム(Al)や銅(Cu)の金属配線が形成された後に絶縁膜(ILD:層間絶縁膜)を堆積する必要があります。しかしAlの融点は660°C、Cuは約1085°Cですが、配線構造の信頼性やバリアメタルの劣化を防ぐために成膜温度は400°C以下が要求されます。LPCVDはこの条件を満たせませんが、PECVDはプラズマ活性化により200〜400°Cで高品質なSiO₂・SiNを成膜できるため、BEOLの標準プロセスとなっています。
LPCVDが高品質膜形成に優れる理由
LPCVDは炉内を600〜900°Cに加熱し、低圧(0.1〜2 Torr)条件下で気相の熱分解・反応を起こします。プラズマを使わないため膜中への水素混入が少なく、膜密度が高い・電気特性が優れる・段差被覆性が良いなど高品質な膜が得られます。特にゲート電極に使うpoly-Si(550〜650°C)、スペーサー・エッチングハードマスクに使うSi₃N₄(700〜800°C)、STI(Shallow Trench Isolation)向けのTEOS-SiO₂などはLPCVDで形成されます。縦型炉で100枚以上を一括処理できるため、ウェハ枚あたりの処理コストも低くなります。
PECVDとLPCVDの具体的な使い分け
前工程(FEOL)の素子形成段階では高温が許容されるためLPCVDが主力です。一方、BEOLの配線形成後は低温制約からPECVDが必須となります。①STI(浅溝素子分離)埋め込み→HDPCVD(高密度プラズマCVD)・LPCVDの組合せ、②ゲートスペーサーSi₃N₄→LPCVD、③BEOL層間絶縁膜SiO₂→PECVD、④エッチングストップ層SiN→PECVD(低温)、⑤パッシベーション膜(最終保護層)→PECVD、が代表的な工程配置です。