SEMICONDUCTOR BASICS — 比較記事

PECVDとLPCVDの違い(プラズマCVD vs 熱CVD)

PECVDとLPCVDはどちらもCVD(化学気相成長)の一方式ですが、活性化エネルギーの源泉が根本的に異なります。PECVD(Plasma Enhanced CVD)はRFプラズマで反応ガスを低温(200〜450°C)で活性化し、金属配線後の低温絶縁膜形成を可能にします。LPCVD(Low Pressure CVD)は熱エネルギーのみで高温(400〜900°C)反応を起こし、高密度・低水素の高品質膜を形成します。前工程(FEOL)の高温工程ではLPCVD、配線後の低温工程(BEOL)ではPECVDが標準的な使い分けです。

最終更新: 2026-08-02

結論:PECVD(プラズマCVD)LPCVD(低圧熱CVD)の違いは?

PECVDとLPCVDの最大の違いは「反応を起こすエネルギー源」です。PECVDはRFプラズマでガスを活性化するため150〜450°Cの低温で成膜でき、金属配線後(BEOL)の絶縁膜形成に使えます。LPCVDは熱エネルギーのみで反応させるため400〜900°Cの高温が必要ですが、膜密度が高く水素含有量の少ない高品質膜が得られ、前工程(FEOL)のpoly-SiやSi₃N₄形成に使われます。

比較表

PECVD(プラズマCVD)LPCVD(低圧熱CVD)
PECVD(プラズマCVD)LPCVD(低圧熱CVD)観点別比較
観点PECVD(プラズマCVD)LPCVD(低圧熱CVD)
活性化エネルギー源RFプラズマ(13.56 MHz)またはマイクロ波・ICP熱エネルギーのみ(電気炉・ランプ加熱)
成膜温度150〜450°C(金属配線後の低温工程に対応)400〜900°C(poly-Si・Si₃N₄等は600〜800°C)
真空圧力0.1〜10 Torr(プロセスにより異なる)0.1〜2 Torr(LPCVDはより低圧で均一成膜)
膜質(密度・水素)成膜温度が低いため膜密度はやや低め。Si-H・N-H結合(水素)を含みやすい高温成膜で膜密度が高く、水素含有量が少ない高品質膜
膜の応力RF周波数・パワー・圧力で圧縮〜引張を調整可能温度プロファイルで制御。引張応力膜が多い傾向
ウェハ処理方式枚葉(シングルウェハ)または小バッチ。クラスタツール構成が多い縦型炉で大バッチ(25〜200枚/炉)。スループットはウェハ単位では高い
代表的な適用膜種TEOS-SiO₂(ILD)・SiN(エッチングストップ)・SiC・SiOC(Low-k ILD)・a-Si高品質Si₃N₄・poly-Si・TEOS-SiO₂(STI)・WSi₂(ポリサイド)
代表装置メーカーApplied Materials(Producer/Precision 5000)・Lam Research・TEL(Trias)・NovusKokusai Electric(旧日立国際電気)・TEL(Alpha-8S)・ASM International・Centrotherm

PECVDが金属配線後に不可欠な理由

半導体の多層配線構造(BEOL:Back-End-of-Line)では、アルミニウム(Al)や銅(Cu)の金属配線が形成された後に絶縁膜(ILD:層間絶縁膜)を堆積する必要があります。しかしAlの融点は660°C、Cuは約1085°Cですが、配線構造の信頼性やバリアメタルの劣化を防ぐために成膜温度は400°C以下が要求されます。LPCVDはこの条件を満たせませんが、PECVDはプラズマ活性化により200〜400°Cで高品質なSiO₂・SiNを成膜できるため、BEOLの標準プロセスとなっています。

LPCVDが高品質膜形成に優れる理由

LPCVDは炉内を600〜900°Cに加熱し、低圧(0.1〜2 Torr)条件下で気相の熱分解・反応を起こします。プラズマを使わないため膜中への水素混入が少なく、膜密度が高い・電気特性が優れる・段差被覆性が良いなど高品質な膜が得られます。特にゲート電極に使うpoly-Si(550〜650°C)、スペーサー・エッチングハードマスクに使うSi₃N₄(700〜800°C)、STI(Shallow Trench Isolation)向けのTEOS-SiO₂などはLPCVDで形成されます。縦型炉で100枚以上を一括処理できるため、ウェハ枚あたりの処理コストも低くなります。

PECVDとLPCVDの具体的な使い分け

前工程(FEOL)の素子形成段階では高温が許容されるためLPCVDが主力です。一方、BEOLの配線形成後は低温制約からPECVDが必須となります。①STI(浅溝素子分離)埋め込み→HDPCVD(高密度プラズマCVD)・LPCVDの組合せ、②ゲートスペーサーSi₃N₄→LPCVD、③BEOL層間絶縁膜SiO₂→PECVD、④エッチングストップ層SiN→PECVD(低温)、⑤パッシベーション膜(最終保護層)→PECVD、が代表的な工程配置です。

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よくある質問

PECVDとLPCVDの最大の違いは何ですか?
最大の違いは活性化エネルギーの源泉と成膜温度です。PECVDはRFプラズマで反応ガスを活性化し150〜450°Cで成膜できるため、金属配線後の低温工程(BEOL)に使えます。LPCVDは熱エネルギーのみで400〜900°Cの高温が必要なため、金属配線前の前工程(FEOL)でのみ使用可能です。また膜質はLPCVDのほうが高密度・低水素で品質が高い傾向があります。
LPCVDとは何ですか?(LPCVD とは)
LPCVD(Low Pressure CVD:低圧化学気相成長)は、通常0.1〜2 Torrの低圧下で炉内を600〜900°Cに加熱し、熱エネルギーのみで化学反応を起こして薄膜を成長させるCVDの方式です。縦型炉(バッチ炉)で100〜200枚のウェハを一括処理でき、高品質のpoly-Si・Si₃N₄・TEOS-SiO₂を成膜できます。プラズマを使わないため膜中の水素が少なく高密度な膜が得られます。
PECVDで成膜できる主な膜種は何ですか?
PECVDの主な適用膜種には:①TEOS-SiO₂(テトラエトキシシランを原料とするILD用酸化膜)、②SiN(エッチングストップ層・スペーサー・パッシベーション)、③SiC・SiCN(銅配線のキャップ層・拡散バリア)、④SiOC・SiOF(Low-k ILD:比誘電率2.2〜3.0)、⑤アモルファスシリコン(a-Si)などがあります。いずれも400°C以下の低温での成膜が必要な応用に対応しています。
PECVDの装置メーカーはどこですか?主要メーカーを教えてください。
PECVDの主要装置メーカーは:Applied Materials(アプライドマテリアルズ:Producer GT・Precision 5000シリーズで最大シェア)、Lam Research(ランリサーチ:Vector SystemシリーズなどPECVD/CVD)、TEL(東京エレクトロン:Trias CVD)、Novus(PECVD特化)などです。Applied Materialsは枚葉式PECVDで特に強く、先端ロジック・メモリ向けで高シェアを維持しています。
PECVDとLPCVDはどちらがウェハ処理量(スループット)が多いですか?
一概には言えませんが、処理方式が異なります。LPCVDは縦型炉で25〜200枚のウェハを一括処理(バッチ処理)するため、1バッチあたりの処理量は多いですが、炉の加熱・冷却に時間がかかります。PECVDは枚葉処理が多く、1チャンバーあたりのWPH(ウェハ/時)は高い傾向がありますが(200 WPH以上の機種も)、バッチの絶対枚数ではLPCVDに劣ります。コスト効率はLPCVDが高いことが多いです。
PECVD膜はLPCVD膜より品質が低いですか?
成膜温度が低いためPECVD膜はLPCVDに比べ一般に膜密度がやや低く、Si-H・N-H結合(水素)を多く含みます。これが原因でウェットエッチング耐性・機械強度・電気絶縁性がLPCVD膜より若干劣る場合があります。ただしPECVDのプロセス条件(RF周波数・パワー・圧力・ガス比)を最適化することで大幅な品質向上が可能です。BEOLでは温度制約上PECVDしか選択肢がなく、十分な実用品質の膜を形成できます。

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