移動度(キャリア移動度、mobility)とは、半導体中で電子や正孔が電界によってどれだけ動きやすいかを表す物性値で、単位はcm²/V·sです。移動度が高いほどキャリアが速く動き、トランジスタの動作速度が向上します。
シリコンの電子移動度は約1,400cm²/V·s、正孔は約450cm²/V·sで、電子の方が高速です。化合物半導体のGaAsやGaN、ゲルマニウムチャネルは移動度が高く、高周波・高速デバイスに用いられます。歪みシリコン技術やHEMTは、移動度を高めてデバイス性能を向上させる代表例です。
移動度は不純物による散乱や格子振動(フォノン)による散乱で低下し、ドーピング濃度が高いほど、また温度が高いほど小さくなる傾向があります。デバイス設計では、この移動度の低下をいかに抑えるかが性能向上の鍵となります。
移動度を高める代表的な技術が、シリコン結晶に歪みを与えてバンド構造を変える歪みシリコンや、ヘテロ接合で電子を不純物から分離するHEMTです。ゲルマニウムチャネルやIII-V族化合物半導体をチャネルに使う研究も、移動度向上による高速化を狙っています。