NOR型フラッシュメモリとは、フラッシュメモリの一種で、メモリセルを並列(NOR接続)で配置することでランダムアクセス(バイト単位の直接読み出し)が可能なメモリです。NANDフラッシュと比べて容量・コストの面では劣りますが、XIP(eXecute In Place:メモリ上で直接プログラムを実行)が可能な点が最大の特徴です。この特性からマイコンのブートコード格納・BIOS/ファームウェア記憶・車載ECUプログラム保存に広く使われています。
NORフラッシュとNANDフラッシュの主な違いを整理します。アクセス方式:NORはランダムアクセス可能(XIP対応)・NANDはページ単位のシーケンシャルアクセス。読み出し速度:NORが高速(30〜50ns)・NANDは低速(マイクロ秒オーダー)。容量・コスト:NANDが圧倒的に高集積・低コスト。消去単位:NORはセクタ(64KB〜)・NANDはブロック(256KB〜)。用途:NORはコード格納・ブートデバイス、NANDはデータストレージ(SSD・スマホストレージ)。
NORフラッシュの主要市場は車載・産業機器・IoTです。自動車1台あたりのNORフラッシュ搭載量は増加しており、ADAS(先進運転支援システム)のECUブートに高速・高信頼NORが必要です。車載グレードNOR(AEC-Q100準拠・-40〜125℃動作・長期供給保証)はWinbond・Macronix・Microchip・Spansion(現Infineon)が供給し、汎用NANDとは異なる安定市場を形成しています。
NORフラッシュの製造技術はNANDほど微細化競争が激しくなく、55nm〜28nmの成熟プロセスが主流です。1セルが1bitのSLCが信頼性要求の高い用途では標準で、書き換え回数はNAND TLCの数百〜1000回に対してNORは10万回以上を保証します。製造装置としてはDUV露光装置(i線・KrF)・CVD・イオン注入が中心で、先端EUV装置は不要なため設備投資コストが抑えられています。
NORフラッシュ市場の注目点はAI on Deviceの進展です。エッジAIデバイスではFPGAやMCUのブートシーケンスにNORが使われるほか、AIモデルの差分更新(Over-the-Air:OTA)のための高書き換え耐久NORが求められています。また組み込みNOR(eNOR)として先端ロジックプロセスに統合するアプローチも研究されており、IoT向けSoCの単一チップ化に貢献しています。