歪シリコン(Strained Silicon)は、トランジスタのチャネル領域に機械的な歪み(ストレス)を加えることでキャリアの移動度を高め、駆動電流と動作速度を向上させる技術です。微細化だけでは性能向上が難しくなった90nm世代前後で本格導入され、以降の高性能CMOSに不可欠な「移動度ブースター」となりました。
歪みの種類は極性で使い分けます。nMOS(電子伝導)にはチャネルを引っ張る引張歪み、pMOS(正孔伝導)には押し縮める圧縮歪みを与えると移動度が上がります。代表的手法に、pMOSのソース・ドレインにSiGeを埋め込んで圧縮歪みを与えるeSiGe(embedded SiGe)や、応力ライナー膜(窒化膜)による歪み付与があります。
歪シリコンは、ゲート長の微細化が頭打ちになっても性能を伸ばせる手段として、デュアルストレスライナーやeSiGeといった形で各社が採用してきました。短チャネル効果やキャリア移動度(carrier-mobility)と密接に関係し、トランジスタ性能を物理的に底上げします。
FinFETやGAA(ゲートオールアラウンド/ナノシート)の世代でも、フィンやナノシートへの歪み導入による移動度向上は継続して使われています。Intel・TSMCなどがプロセスに作り込み、Applied Materialsなどの装置がSiGeエピやストレス膜成膜を担います。finfetやmobility関連の項とあわせて理解すると効果が明確になります。