2D材料(Two-Dimensional Materials:二次元材料)とは、原子1層または数層からなるシート状の結晶材料の総称です。代表例はグラフェン(炭素原子の六方格子シート)のほか、二硫化モリブデン(MoS₂)、二セレン化タングステン(WSe₂)、六方晶窒化ホウ素(h-BN)などの遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)類があります。シリコンの限界を超える究極のスケーリングに向けた次世代チャネル材料として研究が活発です。
半導体デバイスへの応用で特に注目されているのがTMD系の2D材料です。MoS₂やWSe₂は原子層1枚の厚さ(約0.6〜0.7nm)でバンドギャップを持ち、薄いチャネルゆえに短チャネル効果を極限まで抑制できます。これはシリコンFinFETやGAAナノシートが数nm以下のチャネル厚になると結晶品質維持が困難になる問題を回避できる点で優位です。また、高移動度・低オフ電流・優れた電気的スイッチング特性が特長です。
2D材料の課題は大面積・高品質薄膜の形成技術(成膜・転写)の難しさです。グラフェンはCVD(化学気相堆積)で大面積合成が可能ですが、TMD系はさらに難度が高く、均一な単層形成・ダメージレス基板転写・低抵抗オーミックコンタクト形成などが研究上の主要課題です。MIT・imec・台湾大学などの研究機関と、Applied Materials・ASM Internationalなどの装置メーカーが技術開発をリードしています。
グラフェンはトランジスタチャネル以外にも多様な応用が検討されています。バンドギャップが0のため論理トランジスタには不向きですが、高移動度を活かしたRFトランジスタ、熱伝導材料(放熱シート)、透明電極、フレキシブルエレクトロニクスへの応用が進んでいます。またh-BNは優れた誘電特性を持つため、2D材料デバイスのゲート絶縁膜・基板として使われています。
2D材料の実用化は2030年代以降と見られていますが、研究投資は急速に拡大しており、Intelのロードマップにも2D材料チャネルトランジスタが組み込まれています。2D材料のCMOS集積が実現すれば、シリコン限界を超えたスケーリングの継続が可能となり、AI半導体・メモリデバイス・センサーへの応用が広がります。関連する材料メーカー(Sigma-Aldrich等)・CVD装置メーカーの新規事業機会として注目されています。