ナノシートトランジスタ(Nanosheet Transistor)とは、GAA(Gate-All-Around)FETの一形態で、水平に積層された薄い半導体チャネル(ナノシート)をゲート電極が全周から囲む構造のトランジスタです。FinFETのフィン(垂直方向の突起)から、水平方向に積層した複数のシートへと進化したもので、ナノワイヤFETの幅を広げた構造とも言えます。Samsungは同構造をMBCFET(Multi-Bridge Channel FET)、Intelはリボン型としてRibbonFETとも呼んでいます。
ナノシートトランジスタの最大の利点は、FinFETに比べてゲートのチャネル制御性が大幅に向上することです。ゲートがチャネル四方を囲むため、短チャネル効果(SCE)が抑制され、リーク電流を低減しながら高いオン電流を維持できます。さらにシートの幅(ナノシート幅)を変えることで、ロジック向け(広幅=高性能)とSRAM・低消費電力向け(狭幅)を同一プロセスで最適化できる「チューナブル」設計が可能です。
製造上の課題は、薄いナノシート(通常5〜7nm厚)を複数枚精密に積層し、層間の犠牲層(SiGe等)を選択エッチングで除去した後にゲート金属を全周に堆積する工程(インナースペーサー形成含む)の難度です。原子層堆積(ALD)によるHigh-kゲート誘電体の均一な堆積、内側スペーサーのダメージレス成形、ソース/ドレイン部のエピタキシャル成長制御が歩留まりの鍵を握ります。
Samsungが2022年にSF3(3nmノード)でナノシートトランジスタ量産を世界初実施し、TSMCもN2(2nmノード、2025年量産予定)でGAA/ナノシートへ移行します。Intelは18AのRibbonFETで同技術を適用予定です。ナノシートトランジスタへの移行は3nm/2nm世代以降の主要なアーキテクチャトレンドとなっています。
ナノシートの次世代として、NチャネルとPチャネルのナノシートを垂直に積み重ねるCFET(Complementary FET)が研究されています。またシートとシートの間にゲート誘電体壁を設けてNFETとPFETを一体化するフォークシートトランジスタも提案されています。これらはナノシートトランジスタのスケーリング限界を超えるための次ステップとして、imec・Intel・TSMCが研究中です。