High-kゲート誘電体(High-k Gate Dielectric)は、従来のシリコン酸化膜(SiO₂、比誘電率k≈3.9)に代わり、より高い誘電率(k>10)を持つ材料をゲート絶縁膜として使用する技術です。代表的な材料は二酸化ハフニウム(HfO₂、k≈20〜25)で、2007年のIntel 45nmノードからメタルゲートと組み合わせた「HKMG(High-k Metal Gate)」として実用化されました。
High-k誘電体の導入意義は、物理膜厚を増やしながらSiO₂換算膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)を薄くできる点にあります。SiO₂ゲート酸化膜を1nm以下に薄くするとトンネル電流(ゲートリーク)が急増し、消費電力が増大・信頼性が低下します。HfO₂等のHigh-k材料は物理的に厚い膜(2〜5nm)でも等価的に薄いSiO₂と同等の静電容量を実現し、リーク電流を数桁抑制します。
製造方法はほぼ例外なくALD(原子層堆積)が使われます。HfO₂前駆体(TDMAH、HfCl₄など)と酸化剤(H₂O、O₃)を交互に供給するサイクルで、膜厚制御精度はÅ(0.1nm)単位です。Si/SiO₂界面への不純物拡散を防ぐため、通常は直前に極薄のSiON界面層(~1nm)を熱酸化で形成します。
メタルゲート(Metal Gate)との組み合わせも重要で、ポリシリコンゲートでは生じるフェルミレベルピニング問題を解決し、CMOSのNMOS・PMOSの閾値電圧を独立に制御するために、TiN・TaN・TiAlCなど複数のメタル層をALDで積層する「ゲートスタック」設計が採用されます。
High-k誘電体は3nm以降のロジック(GAA構造)でも引き続き採用されるほか、3D NANDのONO(Oxide-Nitride-Oxide)電荷蓄積層の代替や、DRAMのキャパシタ絶縁膜(ZrO₂/Al₂O₃/ZrO₂構造)にも適用が拡大しています。主要材料サプライヤーはMerck(旧EMD材料)、Entegris、UP Chemicalなど、ALD前駆体の専業メーカーです。