電子ビーム描画装置(E-Beam Mask Writer)は、フォトマスク製造において、電子ビームをマスクブランク上に精密に照射・走査することでパターンを直接描画する装置です。光リソグラフィと異なり「マスクなしで」任意のパターンを書けるため、マスク製造の必須設備です。高エネルギー電子ビームを集束・偏向させてレジストに露光し、現像・エッチング後にマスクパターンが形成されます。
電子ビーム描画装置には主に2種類あります。ガウシアンビーム方式(Gaussian beam)は細く絞った電子ビームで逐次走査する方式で、単純・低コストですが時間がかかります。可変成形ビーム方式(VSB:Variable Shaped Beam)はビームを矩形に成形して面積露光するため高速ですが、複雑形状には多数の照射が必要です。さらに現在は多電子ビーム方式(マルチビーム)が最先端で、数千本の電子ビームを並列で描画します。
マルチビーム描画装置(MBES:Multi-Beam E-beam System)はIMS Nanofabricationsが開発し、AppliedMaterialsとのJVによりマスマーケット展開しています。従来のVSB方式に比べ10〜100倍の描画スループットを実現し、EUV用マスク(大量の複雑なOPC補正パターンを含む)の現実的な製造時間での描画を可能にしました。
描画精度の指標として、CDU(Critical Dimension Uniformity)と位置精度(Registration)が重要です。先端EUVマスクでは、CDU 1σ<0.5nm、Registration 2σ<1nm程度の精度が求められます。この精度を達成するために、電子光学系の収差補正、ステージ干渉計による位置制御、温度・振動・電磁場の精密管理が行われます。
マスク描画時間はマスクコストの主要要因の一つです。EUV用マスクの描画に従来のVSB装置では24時間以上かかるケースもあり、スループット向上が製造コスト削減の鍵です。装置メーカーとしてはNuFlare Technology(東芝子会社)、IMS Nanofabricationsが主要プレイヤーで、寡占的な市場となっています。