マスクブランク(Mask Blank)は、フォトマスク(レチクル)を製造するための素材基板で、超高純度合成石英ガラス基板上に遮光膜・位相シフト膜・反射防止膜などを成膜した状態の未パターン基板です。マスクブランクに電子ビーム描画装置でパターンを書き込み、現像・エッチング・検査を経て完成フォトマスクになります。
DUV用マスクブランクでは、石英基板上にクロム(Cr)膜またはMoSi(モリブデンシリサイド)位相シフト膜を成膜します。クロムマスクは製造コストが低く汎用品として普及しており、MoSiハーフトーン位相シフトマスクは光学近接効果補正(OPC)効果があり先端ノードに使われます。
EUV用マスクブランクは構造が全く異なります。EUV光(13.5nm)は物質に強く吸収されるため透過型ではなく反射型構造を採用します。超低熱膨張ガラス(LTEM基板)上に40対のMo/Si多層反射膜を堆積し、さらにTaN(窒化タンタル)吸収体膜を成膜します。多層反射膜の均一性(反射率均一性<0.3%)が露光量ばらつきを直接決定するため、成膜精度の要求が極めて厳しいです。
EUV用マスクブランクの主要サプライヤーは、AGC(旭硝子)、Hoya、S&S Tech(韓国)、信越化学工業(石英基板)に限られており、供給リスクが高い材料として注目されています。EUVマスクブランクの欠陥(多層膜内部の位相欠陥・表面異物)は最終マスク品質に直接影響し、特に解像不能な位相欠陥(バーレル欠陥・ピット欠陥)は歩留まりに深刻な影響を与えます。
マスクブランクの品質保証として、欠陥密度の計測(レーザー散乱検査・AFM)、反射率・膜厚の均一性評価、表面粗さ(表面ラフネスがLWRに影響)の管理が行われます。EUVマスクブランク欠陥の低減はASML・ツールメーカー・マスクブランクメーカーの共同課題として業界全体で取り組まれています。