ホットキャリア注入(HCI:Hot Carrier Injection)は、トランジスタのドレイン近傍の強い電界で加速された高エネルギーのキャリア(ホットキャリア)が、ゲート絶縁膜に飛び込んで界面準位やトラップを生成し、デバイス特性を経時的に劣化させる信頼性現象です。微細化でチャネルが短くなるほど顕在化します。
メカニズムは、ドレイン端の高い横方向電界が電子(または正孔)を加速し、衝突電離(インパクトイオン化)でさらにキャリアを増やしつつ、一部が酸化膜中へ注入されることによります。チャネルが短いほど電界が強まるため、短チャネル効果(short-channel-effect)と表裏一体の問題です。
HCIが進むと、しきい値電圧のシフトや相互コンダクタンス(gm)の低下、駆動電流の減少が起こり、回路の速度・特性が経年で変化します。NBTIやTDDBと並ぶ主要な経時劣化モードであり、長期信頼性設計で必ず考慮されます。
対策としては、ドレイン近傍の電界を緩和するLDD(低濃度ドレイン)やエクステンション構造、電源電圧のスケーリングなどが用いられます。nbti・tddbとあわせて評価され、信頼性試験で寿命が見積もられます。short-channel-effectの項と関連づけると、微細化と信頼性のトレードオフが理解できます。