加速モデルとは、高温や高電圧といった過酷な条件で行った短時間の試験結果を、実際の使用条件での寿命に換算するための数式です。10年の使用に耐えるかを10年かけて確かめることはできないため、信頼性評価は必ず何らかの加速モデルを前提に成立しています。
最も基本的なのがアレニウス則で、劣化反応の速度が温度に対して指数関数的に増えるという関係を表します。加速係数は活性化エネルギーEaとボルツマン定数、試験温度と使用温度の逆数の差で決まり、Eaが大きい劣化機構ほど温度による加速が効きます。たとえばEa=0.7eVの機構なら、125℃での1,000時間試験は55℃使用での数万時間に相当する、といった換算になります。
重要なのは、活性化エネルギーが劣化機構ごとに異なることです。TDDB・NBTI・エレクトロマイグレーションはそれぞれ固有のEaを持ち、値を取り違えれば寿命推定は桁で狂います。加速試験の設計では、まず「どの機構を評価したいのか」を決め、その機構に適したEaと試験条件を選ぶ必要があります。
温度以外の加速要因にもモデルがあります。電圧加速はEモデル(電界に比例)や1/Eモデルで扱われ、湿度による腐食にはPeck則(湿度のべき乗と温度の複合)、温度サイクルによる疲労破壊にはCoffin-Manson則(ひずみ振幅のべき乗)が使われます。HASTがPeck則、温度サイクル試験がCoffin-Manson則に対応する、という関係です。
加速モデルには限界もあります。加速しすぎると実使用では起こらない別の劣化機構が支配的になり、換算が意味を失います。試験条件は「同じ機構が支配的でいられる範囲」に留める必要があり、その妥当性の判断が信頼性エンジニアリングの核心部分になります。