閾値電圧(Vth)とは

Threshold Voltage

最終更新:2026-10-07・製造プロセス|用語集のExcel・PDF版をダウンロード

定義・解説

閾値電圧(Vth:Threshold Voltage、しきい値電圧)は、MOSFET(電界効果トランジスタ)をオンにするために必要な最小のゲート電圧です。ゲート電圧がVthを超えると、チャネル領域に反転層(電流の通り道)が形成され、ソースからドレインへ電流が流れ始めます。Vthはトランジスタのスイッチング動作・消費電力・速度を決定づける最も基本的なパラメータの一つです。

Vthが低いとトランジスタは小さなゲート電圧でオンでき高速動作に有利ですが、オフ時の漏れ電流(リーク)が増えて待機電力が大きくなります。逆にVthが高いとリークは減りますが動作が遅くなります。このトレードオフを管理するため、先端ロジックでは1チップ内に複数のVth(マルチVt:高速用のLVT、低リーク用のHVTなど)を作り分け、回路ブロックごとに最適化します。

Vthは、ゲート絶縁膜の厚さ・材料(High-k)、ゲート電極の仕事関数(メタルゲート)、チャネルのドーピング濃度などで設計・調整されます。HKMG(High-k/メタルゲート)技術では、仕事関数メタルの選択によってnMOS・pMOSそれぞれのVthを制御します。微細化が進むほど、製造ばらつきによるVth変動(ランダムばらつき)を抑えることが歩留まりの鍵になります。

短チャネル効果(SCE)が顕著になると、ドレイン電圧によってVthが低下するDIBLなどの現象が生じ、オフ電流が制御困難になります。これがFinFETやGAA(ゲートオールアラウンド)といった立体構造への移行を促した根本的な理由であり、Vthの安定制御は微細化時代のトランジスタ設計の中心課題です。

図解

しきい値電圧(Vth)が低い場合と高い場合の比較(速さ・リーク・用途)
速さと消費電力のトレードオフを決める、最も基本的なパラメータ。

関連するデータ・ツール

データ仕事関数一覧(金属・電極材料)計算ツールMOSFETしきい値電圧(Vth)計算ツール計算ツールMOSFETドレイン電流(I–V特性)計算ツール計算ツールCMOS消費電力(αCV²f)計算ツール計算ツールEOT・MOSキャパシタ(C–V特性)計算ツール

この用語を扱う職種

設計・デバイス開発アナログ回路設計エンジニア設計・デバイス開発デバイスエンジニア(トランジスタ開発)設計・デバイス開発TCADエンジニア(プロセス・デバイスシミュレーション)設計・デバイス開発PDKエンジニア(プロセス設計キット開発)

デバイスの製造メーカー

TSMC(台湾積体電路製造)台湾

世界最大の半導体ファウンドリ。3nm、5nm、7nmなど最先端プロセスノードで業界をリード。Apple、NVI…

Intel米国

世界最大のCPUメーカー。従来はIDMとして自社プロセスでCPUを製造してきたが、Intel Foundry …

Samsung Electronics(サムスン電子)韓国

世界最大のメモリメーカーであり、先端ロジックファウンドリでもあるIDM。DRAM・NANDフラッシュで市場をリ…

関連カテゴリ

同じトピックの用語

ゲートスタック(High-k/メタルゲート) のトピックで関連する用語です。

同じトピックの企業

ASMインターナショナルオランダ東京エレクトロン(TEL)日本Applied Materials米国Kokusai Electric(国際電気)日本

比較・違いを学ぶ

HKMGとポリシリコンゲートの違い
トランジスタのゲートは、薄い絶縁膜を挟んでチャネルに電界をかけ、電流のオン・オフを切り替える部分です。この小さな積層構造の材料は、微細化の歴史の中で一度、根本か…
→
ALDとCVDの違い(原子層成膜 vs 化学気相成膜)
CVD(Chemical Vapor Deposition)は反応ガスを同時供給して連続的に成膜するのに対し、ALD(Atomic Layer Depositi…
→
FinFETとGAAトランジスタの違い
FinFETは垂直に立つシリコンフィンの三面をゲートで囲む構造で、22nm世代から広く採用されました。GAAはナノシート(または円柱状のナノワイヤ)の全周をゲー…
→
← 用語集に戻る用語集をExcel・PDFで使う →