最終更新 2026-10-10

pn接合とは

PN Junction

pn接合とは、p型半導体とn型半導体を接合した構造で、ダイオード・トランジスタ・太陽電池などほぼ全ての半導体デバイスの基本となります。接合部では電子と正孔が拡散・再結合してキャリアのない空乏層ができ、内蔵電位(電位障壁)が生じます。この障壁が、電流を一方向にしか流さない整流作用の源です。

目次6項目
  1. 定義・解説
  2. 図解
  3. よくある質問
  4. 関連用語
  5. 比較・違いを学ぶ
  6. 出典・参考資料

定義・解説

pn接合(pnせつごう)とは、p型半導体とn型半導体を接合した構造で、ダイオードやトランジスタ、太陽電池など、ほぼ全ての半導体デバイスの基本となる構造です。接合部では電子と正孔が拡散・再結合してキャリアのない空乏層が形成され、内蔵電位(電位障壁)が生じます。

pn接合は一方向にのみ電流を流す整流作用を持ちます。順方向電圧を加えると電流が流れ、逆方向では空乏層が広がってほとんど流れません。この性質がダイオードの整流、トランジスタの増幅・スイッチング、太陽電池の光起電力効果の基礎となっています。

図解

pn接合の熱平衡状態におけるエネルギーバンド図。p型側のバンドが高くn型側が低く、接合部の空乏層でバンドが曲がり、内蔵電位qVbi(Siで約0.6〜0.7V)が障壁を形成。フェルミ準位EFは全体で一直線に揃う。
pn接合のバンド図(熱平衡) ─ 空乏層でバンドが曲がり内蔵電位qVbiの障壁が形成される
pn接合に順バイアス・逆バイアスを加えたときのエネルギーバンド図比較。順バイアスでは障壁がq(Vbi−VF)に下がってキャリアが注入され電流が流れ、逆バイアスでは障壁がq(Vbi+VR)に上がり空乏層が広がって電流が遮断されることを示す。
順バイアス・逆バイアス時のバンドの変化 ─ 障壁の上下がダイオードの整流作用を生む

内蔵電位と空乏層幅は不純物濃度で決まる

pn接合の性質を数値で押さえるうえで基本になるのが、内蔵電位 Vbi と空乏層幅 W の2つです。 いずれもp側・n側の不純物濃度(Na・Nd)から計算できます。

Vbi = (kT/q) · ln(NaNd / ni²)

W = √[ (2εsVbi / q) · (1/Na + 1/Nd) ]

室温(300K)のシリコンでは kT/q ≒ 0.0259 V、真性キャリア濃度 ni ≒ 1.0×10¹⁰ cm⁻³、 比誘電率 11.7 です。p側とn側を同じ濃度にした場合の計算値を並べると、濃度を10倍にするごとに 内蔵電位は約0.12 V ずつ上がり、空乏層幅はおよそ 1/√10 に縮むことが読み取れます。

Na = Nd(cm⁻³)内蔵電位 Vbi空乏層幅 W(ゼロバイアス)
1×10¹⁵0.60 V1.24 µm
1×10¹⁶0.71 V0.43 µm
1×10¹⁷0.83 V0.15 µm
1×10¹⁸0.95 V0.050 µm

シリコン・300K・両側均一ドープ・完全電離を仮定した計算値。実際のデバイスでは接合が階段状ではなく 傾斜を持つため、目安として扱ってください。

片側だけ濃度が高い接合(p⁺n や n⁺p)では、空乏層はほぼ低濃度側にだけ伸びます。 パワーデバイスの耐圧層に低濃度のエピタキシャル層を使うのは、 この性質を利用して空乏層を厚く広げ、電界を薄めるためです。

電流‐電圧特性:60mV/decade という基準値

順方向のpn接合に流れる電流は、ショックレーのダイオード式で表されます。

I = Is · [ exp(qV / nkT) − 1 ]

Is は逆方向飽和電流、n は理想因子(理想的なpn接合で 1、再結合電流が支配的だと 2 に近づく)です。 n = 1 のとき、電流を10倍にするのに必要な電圧は kT/q × ln10 = 約 59.5 mV で、 これが「60mV/decade」としてよく引かれる基準値です。半対数プロットで傾きがこの値から外れていれば、 直列抵抗や再結合電流、リークの影響を疑うことになります。

電流が実用的な大きさになる順方向電圧は材料のバンドギャップでおおよそ決まり、 ゲルマニウムで約0.3 V、シリコンで約0.6〜0.7 V、SiCやGaNのpn接合では約3 V です。 金属と半導体の接合を使うショットキーバリアダイオードが 約0.3 V と低いのは、pn接合とは動作原理が違うためです。

逆方向の降伏:ツェナー降伏とアバランシェ降伏

逆方向電圧を上げていくと、ある電圧で急激に電流が流れ始めます(降伏)。機構は2つあり、 どちらが支配的になるかは不純物濃度で決まります。

項目ツェナー降伏アバランシェ降伏
機構強電界による価電子帯→伝導帯の直接トンネル加速されたキャリアの衝突電離が連鎖する なだれ増倍
不純物濃度両側とも高濃度相対的に低濃度
空乏層薄い(トンネルが起きる距離まで)厚い(加速される距離が必要)
降伏電圧の目安おおむね5 V以下おおむね6 V以上
温度係数負(温度が上がると降伏電圧が下がる)正(温度が上がると降伏電圧が上がる)

温度係数の符号が逆であることから、5〜6 V付近では両者が打ち消し合って温度依存性の小さい降伏電圧が得られます。 基準電圧源に6 V前後のツェナーダイオードが使われるのはこのためです。 一方、パワーデバイスの耐圧設計ではアバランシェ降伏が対象になります。

pn接合はどうやって作るか

pn接合は「p型の板とn型の板を貼り合わせる」のではなく、1枚のウェハの中に作り込みます。 現代のCMOSで主流なのがイオン注入で、 ドーズ量で不純物濃度を、加速エネルギーで接合深さ Xj を独立に制御できます。 注入直後のドーパントは格子位置に収まっておらず電気的に働かないため、活性化アニールで結晶を回復させて初めて接合として機能します。

このとき効くのが熱予算です。高温・長時間のアニールほど活性化率は上がりますが、 同時にドーパントが拡散して接合が深く・なだらかになります。 先端ロジックのソース/ドレインエクステンションでは接合深さを10 nm台に抑える必要があるため、 ミリ秒オーダーのフラッシュアニールやレーザアニールで「活性化はするが拡散はさせない」条件を狙います。

パワーデバイスのように厚く均一な低濃度層が要る場合はエピタキシャル成長を、 成熟プロセスや太陽電池では熱拡散を使うなど、要求される接合の形によって作り方が変わります。

pn接合から派生する主要デバイス

pn接合は単体でもダイオードですが、組み合わせ方と使い方を変えることで 半導体デバイスのほぼ全体に展開されます。

  • バイポーラトランジスタ:pn接合を2つ背中合わせにし、薄いベースを介して電流増幅を得る
  • 太陽電池・フォトダイオード:空乏層で光生成したキャリアを内蔵電位で分離し、光起電力・光電流として取り出す
  • LED:順方向注入したキャリアの再結合を発光として取り出す(直接遷移型の化合物半導体を使う)
  • ESD保護素子:逆方向降伏を意図的に使い、過電圧を逃がす経路にする
  • MOSFETのソース/ドレイン:基板との間に必ずpn接合ができ、これが逆バイアスで素子分離として働く

最後の点は見落とされがちですが重要で、MOSFETの接合リーク電流は待機時消費電力に直結します。リーク電流を抑えるために接合面積を減らし、STIで素子間を分離するという設計は、pn接合の逆方向特性を前提にしています。

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エネルギーバンド図の読み方(6枚の図解で解説)→ダイオードとは(pn接合の応用)→N型・P型半導体とは(用語解説)→

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よくある質問(FAQ)

pn接合とは何ですか?
p型半導体とn型半導体を接合した構造で、接合部にできる空乏層と内蔵電位により、電流を一方向にのみ流す整流作用を持ちます。ダイオードやトランジスタ、太陽電池の基本構造です。
空乏層とは何ですか?
pn接合付近で電子と正孔が再結合してキャリアがなくなった領域です。不純物イオンによる内蔵電位が生じ、キャリアの移動を妨げます。逆電圧をかけると空乏層は広がります。
pn接合はなぜ電流を一方向にしか流さないのですか?
順方向電圧では電位障壁が下がってキャリアが注入され電流が流れますが、逆方向では空乏層が広がり障壁が高くなってほとんど流れないためです。これが整流作用です。

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出典・参考資料

  1. 東芝デバイス&ストレージ「1-6. pn接合」(2026/10/10 確認)