耐圧(絶縁破壊電圧、BVDSS)とは、パワーデバイスがオフ状態で耐えられる最大電圧です。これを超えるとアバランシェ降伏が起きて急激に電流が流れ、多くの場合は熱暴走してデバイスが破壊されます。回路設計では、スイッチング時のサージを見込んで実使用電圧の1.5〜2倍程度の耐圧品を選ぶのが一般的です。
耐圧は主にドリフト層の厚さと不純物濃度で決まります。厚く低濃度にするほど電界が分散して高耐圧になりますが、同時にオン抵抗が増えます。この関係が、パワーデバイス設計の本質的なトレードオフです。
材料が変わるとこのトレードオフの位置そのものが動きます。SiCの絶縁破壊電界はSiの約10倍あるため、同じ耐圧を1/10程度の厚さのドリフト層で実現でき、しかも濃度を上げられます。1200V級でSiC MOSFETがSi IGBTを置き換えつつあるのは、この材料由来の優位が効く領域だからです。
実デバイスでは、理想的な平面接合の理論耐圧はそのまま得られません。チップ端部で電界が集中するため、ガードリングやJTE(Junction Termination Extension)といった終端構造で電界を緩和する必要があり、この終端設計の巧拙が実際の耐圧と信頼性を左右します。