エネルギーバンド図(バンド図)とは、固体中の電子が取り得るエネルギーを縦軸にとり、伝導帯・価電子帯・バンドギャップの位置関係を表した図です。金属と絶縁体の違いから、n型・p型半導体、pn接合の整流作用まで、半導体デバイスの動作はほぼすべてこの一枚の図で説明できます。本記事では、バンド図の基本の読み方から代表的な6パターンを図解で順番に解説します。
ポイント
- バンド図の縦軸はエネルギー ─ 上の帯が伝導帯、下の帯が価電子帯、その間が禁制帯(バンドギャップ)
- 金属はバンドが重なりギャップなし、半導体は約1.1eV(Si)、絶縁体は5eV以上
- 覚える記号は3つ:Ec(伝導帯の底)・Ev(価電子帯の頂上)・EF(フェルミ準位)
- n型はEFが伝導帯寄り、p型は価電子帯寄り ─ ドーピングでフェルミ準位が動く
- pn接合ではバンドが曲がって内蔵電位の障壁を作り、バイアスで障壁が上下して整流作用が生まれる
エネルギーバンド図とは?Ec・Ev・EFの読み方
エネルギーバンド図は、結晶中の電子が取り得るエネルギー準位を帯(バンド)として描いた図で、バンド理論を視覚化したものです。縦軸はエネルギーで、上に行くほど高エネルギーです。図に登場する記号は主に3つ:Ec は伝導帯の底(これより上で電子が自由に動ける)、Ev は価電子帯の頂上(これより下は電子でほぼ満杯)、EF はフェルミ準位(電子の詰まり具合を示す統計的な基準線)です。EcとEvの間のエネルギー領域が禁制帯(バンドギャップ)で、電子はここに存在できません。この3本の線の位置関係を読めれば、材料の導電性やデバイスの動作が図から直接わかります。
金属・半導体・絶縁体のバンド構造の違い
3種類の材料の違いはバンドギャップの幅だけで説明できます。金属(導体)は価電子帯と伝導帯が重なっており、ギャップがないため電子は常に自由に動け、いつでも電気を通します。半導体(シリコンなど)はギャップが約1.1eVと狭く、常温の熱エネルギーや光、ドーピングによって電子が伝導帯へ上がれるため、条件次第で電気を通します。絶縁体(SiO₂など)はギャップが5eV以上と広く、通常の条件では電子が越えられないため電気をほぼ通しません。「金属のバンド構造にはギャップがない」という点が、半導体・絶縁体との決定的な違いです。
真性半導体のバンド図 ─ フェルミ準位はギャップ中央
不純物を含まない純粋な半導体(真性半導体)のバンド図では、フェルミ準位EFがバンドギャップのほぼ中央に位置します。常温では熱エネルギーによって価電子帯の電子の一部が伝導帯へ励起され、伝導帯に自由電子が、価電子帯にはその抜け跡である正孔(ホール)が生まれます。励起はペアで起こるため、電子と正孔の数は常に等しく(n = p = ni)、これが真性半導体のバンド図の最大の特徴です。この状態を出発点に、不純物を加えるとバンド図がどう変わるかが次のn型・p型の話につながります。
n型半導体・p型半導体のバンド図 ─ ドナー準位とアクセプタ準位
n型半導体はリンやヒ素(ドナー)を加えたもので、バンド図では伝導帯の底Ecのすぐ下(約0.05eV)にドナー準位EDが現れます。ドナーの電子はわずかな熱エネルギーで伝導帯に上がれるため、伝導帯には多数の自由電子が供給され、フェルミ準位EFは伝導帯寄りに上がります。p型半導体はホウ素(アクセプタ)を加えたもので、価電子帯の頂上Evのすぐ上にアクセプタ準位EAが現れ、価電子帯に多数の正孔が生まれてEFは価電子帯寄りに下がります。「n型はEFが上、p型はEFが下」─ この非対称性が、両者を接合したときにバンドが曲がる原因になります。
pn接合のバンド図 ─ バンドの曲がりと内蔵電位
p型とn型を接合すると、フェルミ準位の高いn側から低いp側へ電子が拡散し、接合部で正孔と再結合してキャリアのない空乏層ができます。熱平衡ではフェルミ準位EFが全体で一直線に揃うため、もともとEFの位置が違っていたp側とn側のバンドは接合部で滑らかに曲がります。この曲がりの高さが内蔵電位qVbi(シリコンで約0.6〜0.7V)で、キャリアがそれ以上拡散するのを妨げる障壁として働きます。「なぜpn接合のバンド図は曲がるのか」という定番の疑問への答えは、「熱平衡ではEFが一直線になる必要があるから」の一言に尽きます。
順バイアス・逆バイアスでバンドはどう変わるか
pn接合に順バイアス(p側に+)をかけると、外部電圧が内蔵電位を打ち消す向きに働き、障壁はq(Vbi−VF)まで低くなります。電子と正孔が障壁を越えて相手側に注入され、順方向電流が流れます。逆バイアス(p側に−)では逆に障壁がq(Vbi+VR)まで高くなり、空乏層も広がってキャリアは移動できず、微小なリーク電流しか流れません。この「バイアスで障壁が上下する」動きこそがダイオードの整流作用の正体で、トランジスタや太陽電池の動作もこのバンド図の変化の応用として理解できます。
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よくある質問
エネルギーバンド図とは何ですか?
金属のバンド構造はどうなっていますか?
n型半導体とp型半導体のバンド図の違いは何ですか?
pn接合のバンド図はなぜ曲がるのですか?
フェルミ準位(EF)とは何ですか?
順バイアスと逆バイアスでバンド図はどう変わりますか?
出典・参考資料
- HyperPhysics(ジョージア州立大学)「Band Theory of Solids」(2026/10/10 確認)
- 東芝デバイス&ストレージ「1-2. エネルギーバンド図」(2026/10/10 確認)
- 立命館大学 藤野毅「半導体工学(4) エネルギー帯図」(2026/10/10 確認)
- HyperPhysics(ジョージア州立大学)「Fermi Level」(2026/10/10 確認)
- 立命館大学 藤野毅「半導体工学(6) 半導体のキャリア(2)」(2026/10/10 確認)
- 東芝デバイス&ストレージ「1-6. pn接合」(2026/10/10 確認)