GLOSSARY

飛程(Rp)と注入深さ分布とは

Projected Range (Rp)
最終更新:2026-08-30イオン注入装置ビームライン式イオン注入装置

飛程(Rp)と注入深さ分布とは?

飛程(Rp)とは、加速されたイオンがウェハに入射してから停止するまでの深さの平均値で、その広がりを標準偏差ΔRpで表します。核阻止能と電子阻止能の比率が元素とエネルギーで変わるため、同じ加速電圧でも軽いボロンは深く、重いヒ素は浅く止まります。注入直後の物理的分布であり、アニール後の電気的な接合深さXjとは区別されます。

定義・解説

飛程(Rp:Projected Range、投影飛程)とは、加速されたイオンがウェハに入射してから停止するまでに進む深さの平均値です。注入されたドーパントは1点に集まるのではなく、Rpを中心とした分布を作り、その広がりを標準偏差ΔRp(ストラグリング)で表します。イオン注入の深さ方向プロファイルは、この2つのパラメータでおおよそ記述できます。

イオンは固体中で2種類の減速を受けます。標的原子の原子核との衝突による核阻止能(重いイオン・低エネルギーで支配的)と、電子との相互作用による電子阻止能(軽いイオン・高エネルギーで支配的)です。この比率が元素とエネルギーで変わるため、同じ加速エネルギーでもイオン種によってRpは大きく変わります。ボロンは軽く深く入り、ヒ素は重く浅く止まる、という関係です。

この性質が工程設計に直結します。浅い接合を作りたい場合、ボロンではエネルギーを下げても十分に浅くできないため、より重いBF₂⁺として注入して実効的な質量を上げる手法が使われます。逆に深いウェルを作る場合は、MeV級の高エネルギー注入機が必要になります。装置が高電流機・中電流機・高エネルギー機に分かれているのは、この深さとドーズの組合せに対応するためです。

実際の分布はガウス分布から外れます。表面側の裾が長く伸びるチャネリングテールは結晶軸に沿ってイオンが深く侵入することで生じ、これを抑えるためにウェハを7度前後傾けて注入したり、あらかじめ表面をアモルファス化(PAI)したりします。設計段階ではSRIMなどのモンテカルロ計算やプロセスシミュレータでプロファイルを予測します。

なお、注入直後のRpと、アニール後の電気的な接合深さ(Xj)は別物です。熱処理でドーパントが拡散するためXjはRpより深くなり、その拡散量を抑えることが熱バジェット管理の目的になります。プロファイルの実測にはSIMS(二次イオン質量分析)が使われます。

よくある質問(FAQ)

同じ加速電圧でも元素によって深さが違うのはなぜですか?
イオンは標的原子の原子核との衝突(核阻止能)と電子との相互作用(電子阻止能)で減速しますが、その比率が元素の質量とエネルギーで変わるためです。軽いボロンは電子阻止能が支配的で深く入り、重いヒ素は核阻止能が効いて浅く止まります。
浅い接合を作るにはどうすればよいですか?
ボロンは軽く、加速エネルギーを下げても十分浅くならないため、BF₂⁺として注入して実効的な質量を上げる手法が使われます。加えてPAIでチャネリングテールを消し、アニールをミリ秒級に短縮して拡散を抑えます。
飛程Rpと接合深さXjは同じものですか?
違います。Rpは注入直後の物理的な深さ分布の中心で、Xjはアニールでドーパントが拡散・活性化した後の電気的な接合深さです。熱処理を経るためXjはRpより深くなり、その拡散量を抑えることが熱バジェット管理の目的になります。

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