選択比(Etch Selectivity)はターゲット材料と下地・マスクのエッチング速度比。SiO₂/Si選択比50:1の実現、C₄F₈フルオロカーボンガスの化学選択性、3D NAND・GAA向け高選択比ALE(原子層エッチング)の動向をわかりやすく解説。
選択比(Selectivity)とは、エッチングプロセスにおいて「エッチングしたい材料(ターゲット)」と「残したい材料(マスクや下地)」のエッチング速度の比を指します。選択比=ターゲット材料のエッチング速度÷マスク(または下地)のエッチング速度で定義され、値が高いほど目的の材料を選択的に除去できます。高い選択比は、パターン寸法の精度・歩留まり・プロセスウィンドウを確保するために不可欠なパラメータです。
具体的な例として、SiO₂をC₄F₈ガスでエッチングする際のSi(下地)に対する選択比は10〜50:1程度、poly-SiをCl₂でエッチングする際のSiO₂(ゲート酸化膜)に対する選択比は50〜200:1が求められます。コンタクトホール形成ではシリコン基板や拡散層へのダメージを防ぐため、SiO₂対Siの選択比が特に重視されます。選択比が不十分だとエッチングストップ層や下地を損傷し、デバイス特性の劣化・歩留まり低下を招きます。
選択比を支配する主な因子は①エッチングガスの化学組成(C₄F₈のフルオロカーボン系は酸化膜選択性が高い)、②ガス圧力(低圧ではイオン支配でSi選択性が高い傾向)、③基板バイアス電力(イオンエネルギーが高いと機械的スパッタが増え選択比低下)、④チャンバー温度(低温でポリマー堆積が増し選択比向上)です。これらのパラメータをプロセスエンジニアが精密に調整することで所望の選択比を実現します。
先端プロセスでの選択比管理の難しさは増しています。3D NANDのワードライン(WL)エッチングではSiO₂とSiNを交互積層した100層以上の膜を数十:1の高アスペクト比で一括エッチングするため、SiO₂/SiN間の選択比と均一性の制御が極めて困難です。GAAナノシート形成ではSiGe/Siの原子層レベルの選択的エッチング(SiGeとSiで選択比>100:1)が必要で、ALE(原子層エッチング)が本格採用されつつあります。
高選択比プロセスの開発はエッチング装置メーカーのコア技術です。Lam Research・Applied Materials・東京エレクトロンは選択比制御に特化したプロセスキット(チャンバー材料・インジェクタ設計)と反応ガス組成の最適化技術を競っています。CARBEXプロセス(カーボン含有ガス添加)やALE等の新手法も選択比向上の手段として使われています。