原子層エッチング(ALE:Atomic Layer Etching)とは、表面の原子を1原子層ずつ精密に除去するエッチング技術です。化学的修飾ステップと低エネルギーイオン照射(または熱処理)ステップを交互に繰り返す自己停止型(Self-Limiting)の逐次反応により、オングストロームスケールの精度でエッチングを制御できます。原子層堆積(ALD)と対をなす技術として位置づけられ、「ALDと逆の工程」と表現されることもあります。
ALEの基本プロセスは2ステップで構成されます。①修飾ステップ:反応性ガス(例:Cl₂やF含有ガス)をウェハ表面に暴露し、表面原子1層のみを化学的に活性化(修飾)します。自己停止反応のため、1層以上は反応しません。②除去ステップ:低エネルギーのAr⁺イオンビームまたは熱エネルギーを与え、修飾された表面層のみを選択的に除去します。この2ステップを繰り返すことで、1サイクルごとに1原子層(〜0.1〜0.5nm)の精度でエッチングが進みます。
ALEが先端半導体製造で重要性を増している理由は、3nm以下のトランジスタ形成に必要な「ダメージフリー・高選択比・原子スケール制御」の要求です。FinFETやGAAナノシートのゲートリセス加工、High-k誘電体の薄膜精密除去、エッチング後の表面粗さ(LWR)の最小化などに対して、従来のプラズマエッチング(RIE)では過剰なダメージが生じる問題をALEは解決します。
ALEには「プラズマALE(イオン支援型)」と「熱ALE(熱エネルギー型)」の2種類があります。プラズマALEはSi・GaN・SiNなど多くの材料に適用でき、Lam Research(VECTOR ALE)やApplied Materials(Centura)が装置を市場投入しています。熱ALEはAl₂O₃やHfO₂などの酸化物の精密除去に適しており、より低ダメージで加工できます。
ALEは今後さらに重要性が高まる技術と見られており、GAA/CFETのゲートスタック加工、エアギャップ形成、2D材料の原子層制御エッチングへの応用が期待されています。Lam Research・Applied Materials・東京エレクトロンがALE装置開発の主要プレイヤーです。ALEの普及は「より少ない物質で、より精密に」という先端製造のトレンドを体現しており、半導体装置産業の高付加価値化を牽引しています。