最終更新 2026-10-07

エッチングとは

Etching

エッチングとは、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンをマスクにして、その下の薄膜を選択的に除去するプロセスです。露光で「描いた」パターンを実際の立体形状として「彫り込む」工程にあたり、成膜・露光と並ぶ前工程の三大基本プロセスの一つです。プラズマを使うドライエッチングと、薬液によるウェットエッチングに大別されます。

目次9項目
  1. 定義・解説
  2. 製造工程フローでの位置
  3. 図解
  4. 紛らわしい言葉の切り分け
  5. よくある質問
  6. 設備の製造メーカー
  7. 関連用語
  8. 比較・違いを学ぶ
  9. 出典・参考資料

定義・解説

露光が回路パターンを「描く」工程だとすれば、エッチングはそれを実際の立体形状として「彫り込む」工程です。何を削り、何を残すかは膜種ごとの薬液・ガスの選び方で決まり、どこまで垂直に彫れるかはプラズマ中のイオンとラジカルの役割分担で決まります。

エッチング(Etching)とは、半導体製造の前工程において、フォトリソグラフィで形成したレジストパターンをマスクとして、その下の薄膜(シリコン・酸化膜・窒化膜・金属膜など)を選択的に除去するプロセスです。成膜・露光と並んで半導体製造の三大基本プロセスの一つであり、トランジスタや配線パターンの実際の「形」を作り出す工程です。

エッチングは大きく「ドライエッチング」と「ウェットエッチング」の2種類に分類されます。ドライエッチングはプラズマを使った気相処理で、ウェハに対して垂直方向への異方性(指向性)エッチングが可能です。ウェットエッチングは薬液による等方性(全方向均等)エッチングで、等方性の特性から微細パターン形成よりも酸化膜除去・洗浄・選択エッチングに多用されます。現代の先端プロセスではドライエッチングが主力で、ウェットエッチングは補助的に使われます。

エッチングの性能を表す主要指標として「選択比(Selectivity)」「異方性(Anisotropy)」「エッチング速度(Etch Rate)」「均一性(Uniformity)」があります。選択比はエッチングしたい材料とそれ以外(マスク・下地)のエッチング速度の比で、高いほど精密な加工が可能です。異方性は縦方向と横方向のエッチング速度の差であり、ドライエッチング(特にRIE)では縦方向を優先できるため垂直な壁面形状(側壁)が得られます。

半導体製造でのエッチングの具体的な用途には、ゲート電極パターニング(poly-SiゲートのRIE)、コンタクトホール・ビアホール形成、STI(浅溝素子分離)トレンチ加工、銅ダマシン配線のトレンチ/ビア形成、3D NANDのチャネルホール(高アスペクト比)形成、FinFETのフィン形成、GAAナノシートのSiGe選択除去などがあります。ノードが微細化するほどエッチング工程の数・精度要求は増加し、2nm以下では原子層エッチング(ALE)の採用も進んでいます。

エッチング装置の主要メーカーは、Lam Research(ランリサーチ:KiyoシリーズやFlexシリーズでドライエッチング世界最大シェア約40%)、東京エレクトロン(TactrasシリーズやCertas)、Applied Materials(Centris・Producer Etch)、SPTS(英国)です。エッチング装置市場は半導体製造装置市場の中でも最大セグメントの一つです。

製造工程フローでの位置

エッチングは全21ステップのうち STEP 8 にあたります(青枠)。

前工程(ウェハプロセス)後工程(組立・実装・テスト)01シリコンウェハの準備02エピタキシャル成長03↻洗浄04熱酸化05↻成膜06↻レジスト塗布07↻露光(リソグラフィ)08↻エッチング09↻アッシング(レジスト除去)10イオン注入11アニール(活性化熱処理)12↻CMP(平坦化)13↻配線形成(ダマシン)14↻ウェハ検査・計測15ウェハテスト(プロービング)16ウェハ薄化(裏面研削)17ダイシング18ダイボンディング19ワイヤボンディング20モールディング(封止)21最終テスト
↻ は配線などの層の数だけ繰り返す工程です。各工程をクリックすると用語解説へ進みます。

図解

エッチングによるパターン形成の流れ(成膜・リソグラフィ・エッチング・レジスト除去)
成膜・露光と並ぶ前工程の基本。この組み合わせを層の数だけ繰り返す。

被エッチング膜ごとのエッチング剤

エッチングは「何を削るか」で使う薬液・ガスがほぼ決まります。膜種と用途の対応を押さえておくと、 工程フローを読むときの見通しが良くなります。

被エッチング膜ウェット(薬液)ドライ(主なガス)主な用途
Si(単結晶・ポリ)HF+HNO₃混酸(等方性)/KOH・TMAH(異方性)HBr、Cl₂、SF₆フィン形成、STIトレンチ、ゲート加工
SiO₂(酸化膜)HF、BHF(HF+NH₄F)CF₄、CHF₃、C₄F₈(+O₂・Ar)コンタクト/ビア、高アスペクト比ホール
Si₃N₄(窒化膜)熱リン酸 H₃PO₄(約155〜180℃)CH₃F/O₂、CF₄スペーサー、ハードマスク除去
Al 配線リン酸・硝酸・酢酸系混酸Cl₂、BCl₃成熟ノードの配線パターニング
W(タングステン)—SF₆、NF₃プラグのエッチバック
Cu 配線—(実用的な乾式除去が困難)—エッチングせずダマシン+CMPで形成

最下段の銅が示すとおり、「削れないからエッチングしない」という選択もあります。 銅は揮発性のハロゲン化物を作りにくく乾式で除去しづらいため、 先に溝を掘ってから銅を埋め、余分をCMPで削り取るダマシン法が使われています。

ウェットエッチングの化学反応

シリコン(HF+HNO₃ 混酸)

硝酸がシリコンを酸化してSiO₂に変え、フッ酸がそのSiO₂を溶かす、という2段の反応が繰り返し進みます。

Si + 4HNO₃ → SiO₂ + 4NO₂↑ + 2H₂O(酸化)

SiO₂ + 6HF → H₂SiF₆ + 2H₂O(溶解)

酸化膜(HF・BHF)

SiO₂はフッ酸に溶けて水溶性のヘキサフルオロケイ酸となります。純粋なHFではレジスト界面での エッチレート変動が大きいため、実際にはNH₄Fを加えてpHを安定させたバッファードフッ酸(BHF)を使い、 レートの再現性を確保します。

SiO₂ + 6HF → H₂SiF₆ + 2H₂O

窒化膜(熱リン酸)

Si₃N₄は約155〜180℃に加熱したリン酸中での加水分解によって除去されます。 この条件ではSiO₂に対する選択比が高く取れるため、下地の酸化膜を残したまま窒化膜だけを抜く用途に向きます。

Si₃N₄ + 12H₂O → 3Si(OH)₄ + 4NH₃↑

熱リン酸は高温・高粘度で、槽内の溶存シリコン濃度によってレートと選択比が変わります。 液の管理そのものがプロセス条件の一部です。

異方性ウェットエッチング(結晶面で削り分ける)

ウェットエッチングは等方性であるのが一般的ですが、KOHやTMAHのアルカリ溶液でシリコンを削る場合は例外です。 原子の結合密度が高い(111)面のエッチレートが(100)面に比べて2桁近く遅いため、 (100)基板を開口して削ると(111)面が壁として残り、基板面から54.74°傾いたテーパー形状ができます。

Si + 2KOH + 2H₂O → K₂SiO₃ + 2H₂↑

この角度は結晶方位で決まる定数なので、寸法が再現性よく決まります。 MEMSのダイアフラムやV溝、インクジェットヘッドのノズルなど、 ドライエッチングよりも安価に立体構造を作りたい場面で今も現役です。 TMAHは金属イオンを含まないため、CMOS工程との相性ではKOHより有利です。

ドライエッチングは「イオンアシスト反応」で成り立つ

ドライエッチングが異方性を持つ理由は、 ラジカルによる化学反応とイオンによる物理衝撃のどちらか一方ではなく、両者の相乗効果にあります。 反応性ラジカルは中性なので方向性を持たず全方向に飛びますが、 それだけでは反応生成物が表面から離れず、エッチングはほとんど進みません。 そこへプラズマのシース電界で垂直に加速されたイオンが打ち込まれると、 表面の結合が切られ反応生成物の脱離が促進され、その面だけ反応が急速に進みます。

結果として、イオンが当たる底面は速く削れ、当たらない側壁はほとんど削れません。 さらに側壁には反応生成物が再付着して保護膜(デポ膜)を作るため、垂直性が保たれます。 エッチングガスにCF系を使うと側壁にフルオロカーボン膜が形成されるのはこの働きで、 「削る成分」と「守る成分」のバランスを取ることがプロセス条件の作り込みそのものです。

エッチング特性を表す4つの指標

エッチング条件の良し悪しは、次の指標で定量的に議論されます。

選択比 S = ER(被加工膜) ÷ ER(マスクまたは下地)

異方性度 A = 1 − (横方向ER ÷ 縦方向ER) ※A = 1 で完全異方性

均一性 = (最大値 − 最小値) ÷ (2 × 平均値) × 100 [%]

アスペクト比 = 加工深さ ÷ 開口幅

このうち選択比は、下地を突き抜けないための余裕を決めます。 ウェハ面内の分布があるため、最も遅い場所でも確実に膜を抜き切るには 意図的に削り過ぎる時間(オーバーエッチ)が必要で、 その間に下地がどれだけ削られるかが選択比で決まるからです。

高アスペクト比エッチングと形状異常

3D NANDのチャネルホールのように、アスペクト比が数十対一を超える加工では、 浅い加工では問題にならなかった現象が一気に顕在化します。

  • ARDE(アスペクト比依存エッチング):細い穴ほどイオンとラジカルが底まで届かず、エッチレートが落ちる。同一ウェハ上に太い穴と細い穴が混在すると深さが揃わない
  • ボーイング:穴の中腹が横に膨らむ。側壁で反射したイオンが集中することが原因
  • ノッチング:絶縁膜に達したところで電荷が溜まり、イオン軌道が曲げられて底部の隅が横方向にえぐれる
  • ツイスティング:深い穴の途中で軌道がずれ、穴が曲がる
  • ローディング効果:エッチングされる面積の総量が変わるとラジカルの消費量が変わり、レートが変動する

対策として、ウェハを−30〜−60℃まで冷やして側壁への反応生成物の吸着を促す極低温エッチングや、 パルス変調プラズマによるチャージアップ緩和が使われます。 さらに精度が要る場面では、自己制限的な表面反応を使って1原子層ずつ除去するALE(原子層エッチング)が選ばれます。

いつ止めるか:終点検出

エッチングは時間制御だけでは膜厚のばらつきを吸収できないため、 「膜が抜けた瞬間」を検出して止めるのが基本です。代表的な方法は2つあります。

  • OES(発光分光):プラズマの発光スペクトルを監視し、反応生成物に由来する波長の強度が変化した点を終点とする。被加工膜の露出面積が小さいと信号が埋もれるため、微細化とともに感度が課題になる
  • 干渉法:膜表面と界面からの反射光の干渉縞を数えて残膜厚を追う。透明膜のエッチング量をその場で測れる

終点を検出したあと、面内の遅い場所を抜き切るためにオーバーエッチを追加し、 最後にアッシングでレジストを除去して次工程へ渡します。

紛らわしい言葉の切り分け

ドライエッチングとウェットエッチング。ドライはプラズマ中のイオンとラジカルで削り、縦方向だけを削る(異方性)加工ができます。ウェットは薬液で削るため全方向に進み(等方性)、微細パターンには向きませんが、選択比が高く洗浄や全面除去に使われます。 比較記事 →

RIEとALE。RIEは連続的に削る、現在の主流のドライエッチングです。ALEは削る反応を自己停止する段階に分け、1原子層ずつ削ります。速さはRIE、深さの制御はALEが優れます。 比較記事 →

ICPとCCP。プラズマの作り方の違いです。ICPはコイルの誘導電界で高密度プラズマを作り、イオンの量と当てるエネルギーを別々に制御しやすい方式です。CCPは平行平板の電極間で作り、絶縁膜のエッチングに多く使われます。 比較記事 →

関連するデータ・ツール

図解半導体前工程の断面図解(MOSFETができるまで)計算・換算ツール圧力・真空度の単位換算ツール(Torr・Pa・mbar)計算・換算ツールエッチング時間・オーバーエッチ・選択比 計算ツール

よくある質問(FAQ)

エッチングとは何ですか?
マスクを使って不要な薄膜を選択的に除去し、回路パターンを形成する工程です。ドライ(プラズマ)とウェット(薬液)に大別されます。
ドライエッチングとウェットエッチングの違いは?
ドライはプラズマで垂直に削れ微細加工に向き、ウェットは薬液で等方的に削れ大量処理・低コストに向きます。
エッチング装置の主要メーカーは?
Lam Research、東京エレクトロン、アプライドマテリアルズが世界3大メーカーです。3D NANDの深掘りなどで競っています。

設備の製造メーカー

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比較・違いを学ぶ

出典・参考資料

  1. Lam Research「Etch」(2026/10/07 確認)
  2. 東京エレクトロン nanotec museum「半導体用語集:エッチング」(2026/10/07 確認)