シリコンフォトニクス(Silicon Photonics)とは、シリコンや関連材料を用いて光導波路・変調器・光検出器などの光学素子を標準CMOSプロセスと親和性の高い製造技術で作製し、光信号によるデータ伝送・処理を実現する技術分野である。銅配線による電気インタフェースと比較して、より高い帯域幅・低い消費電力・長距離伝送が可能であり、データセンターの光インタコネクト、LiDAR、量子コンピューティングなど幅広い応用が期待される。
シリコンフォトニクスの主要コンポーネントには、光源(レーザー)、光変調器(Mach-Zehnder変調器、マイクロリングリング変調器)、光検出器(Ge-on-Si フォトディテクタ)、光分配ネットワーク(スプリッター、マルチプレクサ)がある。シリコンは間接遷移バンドギャップのため自力発光しないため、InPやGaAsレーザーをチップにハイブリッド集積するか、外部レーザーから光を供給する設計が一般的である。
データセンター向けのシリコンフォトニクス光トランシーバーはすでに量産段階にあり、400G・800G・1.6T対応製品が市場に出回っている。IntelはFab内製でシリコンフォトニクスモジュールを製造しており、TSMCもシリコンフォトニクス専用プラットフォームをPDK(プロセス設計キット)として提供している。市場規模は2030年に100億ドル超と予測されている。
「Co-Packaged Optics(CPO)」は、AIアクセラレータやスイッチチップのパッケージ内にシリコンフォトニクスモジュールを組み込む次世代アーキテクチャである。プラガブル光トランシーバーに比べて電力効率を5〜10倍向上できるとされ、Meta・Google・Microsoftのデータセンター向けに採用が加速している。CPOにはハイブリッドボンディングや先進パッケージング技術との組み合わせが必要となる。
シリコンフォトニクスの課題として、シリコンの光損失(伝播損失・曲がり損失)の低減、レーザー集積の歩留まり向上、熱による波長シフト補償(Temperature-Insensitive設計)などが挙げられる。また2D材料(グラフェン等)とシリコン導波路の融合による超高速変調器の研究も進んでいる。Synopsysは光設計EDAツール「OptSim/RSoft」でシリコンフォトニクス設計をサポートしている。