熱酸化(Thermal Oxidation)は、シリコンウェハを高温(800〜1200℃)の酸化性雰囲気(乾燥酸素またはスチーム)にさらすことで、ウェハ表面のシリコンと酸素を反応させてシリコン酸化膜(SiO₂)を形成するプロセスです。1960年代から用いられる最も基礎的な半導体プロセスの一つで、形成されるSiO₂の品質と界面の清浄さが極めて高いことが特長です。
熱酸化は2つのモードに分かれます。乾燥酸化(Dry Oxidation)は純粋な酸素(O₂)を用い、成長速度は遅いですが緻密で高品質な薄膜が得られ、ゲート酸化膜など品質を最優先する用途に使われます。湿式酸化(Wet Oxidation)は水蒸気(H₂O)を用い、成長速度が速く厚い酸化膜の形成(フィールド酸化膜・STI補助)に適しています。
熱酸化によって形成されるSiO₂の最大の特長は、Si/SiO₂界面の欠陥密度が極めて低い点です。この清浄な界面は、トランジスタのゲートリーク電流の低減とキャリア移動度の維持に寄与します。ただし、一般的な熱酸化では酸化膜厚さが増すにつれ成長速度が低下するため(Deal-Grove モデル)、数nm以下の超薄膜ゲート絶縁膜の形成には限界があります。
現代の先端ロジックでは、ゲート絶縁膜として従来のSiO₂に代わりHigh-k材料(HfO₂など)がALDで形成されます。それでも熱酸化は、ゲート絶縁膜直下のInversion LayerのSiON界面層(1〜2nm)の形成、STI(浅溝素子分離)の酸化ライニング、パッシベーション膜など、多くの工程で依然として使われています。
熱酸化装置は縦型・横型の拡散炉(Diffusion Furnace)が主流で、東京エレクトロン(TEL)、Kokusai Electric(旧日立国際電気)、ASM International(垂直炉)が主要サプライヤーです。温度均一性と酸化雰囲気の清浄度の管理が膜品質を決定する重要な因子です。