スパイクアニールとは、RTP(急速熱処理)装置で昇温と降温を極限まで速くし、ピーク温度に保持時間をほとんど設けずに通過させる熱処理手法です。温度プロファイルが尖った針(スパイク)状になることからこう呼ばれ、イオン注入後のドーパント活性化における標準的な手法として定着しました。
狙いは、活性化と拡散抑制という相反する要求の両立です。ドーパントを格子位置に取り込む活性化には1000℃以上の高温が要りますが、高温に留まればドーパントが拡散して接合が深く広がってしまいます。昇温速度を毎秒200〜250℃、降温も同等の速さにして高温域の滞在時間を1秒未満に切り詰めることで、活性化に必要な熱だけを与えて拡散を最小化します。
この手法を成立させているのが装置側の作り込みです。タングステンハロゲンランプによる急速加熱に加え、降温速度を確保するための低熱容量なウェハ支持構造と、ウェハ面内の温度均一性を保つマルチゾーンのランプ制御が必要です。放射温度計(パイロメータ)による実測とフィードバックで、数℃レベルの面内均一性を保ちます。
スパイクアニールの限界は、秒オーダーという時間スケールにあります。ゲート長が数十nmを切る世代では、この1秒でも拡散が無視できなくなり、より短時間のミリ秒アニール(フラッシュランプ)やマイクロ秒〜ナノ秒のレーザアニールへと、熱処理の時間スケールを短縮する流れが生まれました。実務では、スパイクアニールにミリ秒アニールを重ねる複合レシピも使われます。
スパイクアニール以外のRTP用途としては、シリサイド形成、酸化膜の急速熱酸化(RTO)、成膜後の膜質改善などがあります。いずれも「短時間で必要な熱だけ与える」という同じ思想に立っており、熱バジェット管理の中核をなす装置です。