結論:東京エレクトロン(TEL)とApplied Materials(AMAT)の違いは?
最大の違いは「同じ総合装置メーカーでも、強い装置の組み合わせが違う」ことです。Applied Materials(米国)は売上規模で世界最大級の装置メーカーで、PVD・CVD・エピタキシーなどの成膜、CMP、イオン注入、電子線によるレビュー・検査まで幅広い工程を持ち、特に配線の成膜とCMP、イオン注入で強い地位にあります。東京エレクトロン(日本)はEUV向けを含む塗布現像装置(コータ/デベロッパ)で圧倒的なシェアを持ち、絶縁膜エッチング、縦型炉による熱処理・成膜、洗浄、ウェハプローバでも存在感があります。塗布現像とCMP・イオン注入では両社が重ならない一方、エッチングと成膜では真っ向から競合しています。
比較表
| 観点 | 東京エレクトロン(TEL) | Applied Materials(AMAT) |
|---|---|---|
| 本社 | 日本・東京都港区 | 米国・カリフォルニア州サンタクララ |
| 設立 | 1963年 | 1967年 |
| 売上規模の目安 | 約2.4兆円(2025年3月期) | 約284億ドル(2025年10月期) |
| 看板となる装置 | 塗布現像装置(コータ/デベロッパ) | PVDを中心とする成膜装置、CMP装置 |
| エッチング | 絶縁膜エッチングに比較的強い | 導体エッチングを中心に展開 |
| 成膜 | 縦型炉(熱処理・CVD・ALD)、枚葉CVD・ALD | PVD・CVD・ALD・エピタキシーを網羅 |
| 洗浄 | 枚葉・バッチ洗浄装置を持つ | 主力事業ではない |
| CMP・イオン注入 | 手がけていない | いずれも主要サプライヤー |
| 検査・テスト | ウェハプローバ(ウェハテスト) | 電子線によるレビュー・検査装置 |
| 露光装置 | 手がけていない(露光装置と連結する塗布現像装置を供給) | 手がけていない(露光後のパターン検査・計測装置を供給) |
得意装置は意外なほど重ならない
総合装置メーカーとして並べられる両社ですが、装置ごとに見ると強みの分布は補完的です。TELの看板は、露光装置と連結してレジストの塗布と現像を行う塗布現像装置で、EUV露光向けではほぼ独占的な地位にあります。AMATはこの分野を手がけていません。逆に、AMATが大きなシェアを持つCMP装置とイオン注入装置を、TELは持っていません。配線工程でもAMATはバリアメタルや銅シードを形成するPVDで強く、TELは縦型炉を使った熱処理・成膜で長い実績があります。同じ前工程でも、両社が得意とする工程は別の場所に分布しています。
真っ向から競合するエッチングと成膜
両社が正面からぶつかるのはエッチングと成膜です。エッチングではLam Researchを含めた3社が市場の大半を占め、TELは酸化膜や窒化膜を削る絶縁膜エッチングに、AMATはシリコンやメタルを削る導体エッチングに比較的強いという色分けがあります。成膜ではCVD・ALDで両社にLam ResearchやASM Internationalが加わり、GAAトランジスタや3D NANDで新たに必要になる膜ごとに採用を争っています。先端ノードで工程数が増える領域ほど競争が激しく、ここでの採用状況が両社の業績を左右します。
撤回された経営統合
両社は2013年に経営統合を発表しました。実現すれば世界最大の装置メーカーが誕生する計画でしたが、米国司法省が競争上の懸念を示し、2015年に統合は撤回されました。エッチングや成膜など両社が競合する工程で、統合によって顧客の選択肢が狭まる点が問題視されたためです。この経緯は、両社の製品が補完的である一方で、主要な工程では強く競合していることを示しています。AMATはその後、2019年に日本の成膜装置メーカーKOKUSAI ELECTRIC(当時の国際電気)の買収を発表しましたが、中国当局の承認が得られず2021年に断念しています。
事業構造の違い
AMATは半導体製造装置に加え、装置の保守・部品・アップグレードを担うサービス事業と、ディスプレイ製造装置の事業を持ちます。TELも半導体製造装置が売上の大半を占め、フラットパネルディスプレイ製造装置の事業と、保守・改造を担うフィールドソリューション事業を持つ構成です。両社とも中国向け売上の比率が高く、米国の輸出規制強化の影響を受けやすい立場にある点は共通しています。決算期はTELが3月、AMATが10月下旬で、同じ「2025年度」でも対象期間が半年以上ずれる点に注意が必要です。
まとめ(どう見比べるか)
両社を比べるときは、会社全体の売上よりも「どの工程の装置で強いか」を見るのが実態に合っています。リソグラフィ周辺の塗布現像、絶縁膜エッチング、熱処理ならTEL、配線の成膜・CMP・イオン注入ならAMATが中心的なサプライヤーです。エッチングとCVD・ALDは両社にLam Researchを加えた競争領域で、ノードごと・工程ごとに採用が分かれます。