結論:ICP(誘導結合プラズマ)とCCP(容量結合プラズマ)の違いは?
最大の違いは「プラズマの作り方と、それによって得意になるイオンの当て方」です。ICPはコイルに流した高周波電流が作る誘導電界でプラズマを生成するため、低圧(1〜50mTorr程度)で高密度(10¹¹〜10¹² cm⁻³程度)のプラズマを作れ、プラズマ密度とイオンエネルギーを別々の電源で制御できます。CCPは平行平板電極間の電界でプラズマを作るため密度は1〜2桁低い一方、電極シースに大きな電圧がかかって高いイオンエネルギーを得やすく、大面積でも均一です。この性質から、ゲートやシリコンなど下地を傷めずに精密に削る導体エッチングはICP、Si–O結合を切るために強いイオン衝撃が要る酸化膜・窒化膜の絶縁膜エッチングはCCPが主流です。
比較表
| 観点 | ICP(誘導結合プラズマ) | CCP(容量結合プラズマ) |
|---|---|---|
| プラズマの生成 | 誘電体窓の外側に置いたコイルに高周波電流を流し、誘導電界で電子を加速する | 向かい合う平行平板電極の間に高周波電圧をかけ、電極間の電界で電子を加速する |
| プラズマ密度 | 高い(10¹¹〜10¹² cm⁻³程度) | 低め(10⁹〜10¹⁰ cm⁻³程度) |
| 動作圧力 | 低圧(1〜50mTorr程度) | やや高め(10〜200mTorr程度) |
| 密度とイオンエネルギーの制御 | コイル側電源(ソース)とウェハ側電源(バイアス)で独立に制御できる | 電極がプラズマ生成とイオン加速を兼ねるため連動しやすい。2周波化で分離を図る |
| イオンエネルギー | 低エネルギーまで絞れ、下地ダメージを抑えやすい | 電極シースに大きな電圧がかかり、高エネルギーのイオンを得やすい |
| 均一性 | コイル形状とチャンバー設計に依存し、大口径での均一化に工夫が要る | 平板電極なので大面積でも均一なプラズマを作りやすい |
| 主なエッチング対象 | シリコン、ポリシリコン(ゲート)、メタル配線、STI、シリコン深掘り | SiO₂・SiNなどの絶縁膜、コンタクトホール、ビア、高アスペクト比ホール |
| 代表的なガス系 | Cl₂・HBr・SF₆などのハロゲン系 | C₄F₈・CF₄などのフルオロカーボン系 |
| 装置構造 | 誘電体窓とコイルが必要で比較的複雑 | 構造が単純で、部品点数とコストを抑えやすい |
| 成膜での利用 | 高密度プラズマCVD(HDP-CVD) | PECVD(SiO₂・SiNの低温成膜)の標準方式 |
プラズマの作り方の違い
CCPは、2枚の平行平板電極の片方または両方に高周波電圧をかけ、電極間の電界で電子を加速してガスを電離します。電極とプラズマの境界にはシースと呼ばれる電位差の大きい層ができ、ここでイオンが加速されてウェハに垂直に入射します。つまりCCPでは「プラズマを作る電界」と「イオンを加速する電界」が同じ電極から生まれます。ICPは、誘電体の窓越しに置いたコイルへ高周波電流を流し、時間変化する磁場が誘導する電界で電子を加速します。プラズマの生成はコイル側で完結するので、ウェハを載せた電極には別のバイアス電源をつなぎ、イオンを引き込む強さだけを独立に決められます。この「独立に制御できるかどうか」が、両方式の性格の違いの出発点です。
なぜ導体エッチングはICPなのか
トランジスタのゲートやシリコンのフィンを削る導体エッチングでは、形状を垂直に保ちつつ、数nmしかないゲート絶縁膜などの下地で確実に止めることが求められます。高密度プラズマなら反応種とイオンが豊富なので低圧でも十分なエッチング速度が出せ、低圧ではイオンが途中で散乱しにくく直進性が上がります。そのうえでバイアス電力を絞れば、イオンエネルギーを下げて下地へのダメージと選択比の低下を抑えられます。密度は高く、エネルギーは低くという組み合わせは、生成と加速が分離したICPだからこそ実現しやすいものです。
なぜ絶縁膜エッチングはCCPなのか
SiO₂のSi–O結合は強く、化学反応だけではほとんど削れません。フルオロカーボン系ガスでウェハ表面にポリマーを堆積させ、そこに高エネルギーのイオンを当てて反応を進めるイオン支援反応が、絶縁膜エッチングの基本です。CCPは電極シースに大きな電圧がかかるので高エネルギーのイオンを作りやすく、平板電極で大面積の均一性も確保しやすい方式です。現在の絶縁膜エッチング装置は、高い周波数でプラズマ密度を、低い周波数でイオンエネルギーを受け持たせる2周波(あるいは多周波)のCCPが一般的で、CCPの弱点だった制御の連動もかなり解消されています。3D NANDのチャネルホールのように酸化膜と窒化膜の積層を深く掘り抜く工程でも、この高イオンエネルギー型のCCPが使われています。
両者の境界は固定ではない
ICPは導体、CCPは絶縁膜という区分は傾向であって、規則ではありません。MEMSのシリコン深掘り(ボッシュプロセス)や化合物半導体の加工は高密度が要るためICPが主流ですし、ICPで絶縁膜を削る装置も存在します。逆にCCPも多周波化によってイオンエネルギー分布を細かく制御できるようになりました。また、ラジカルとイオンを空間的に分けるリモートプラズマや、原子層単位で削るALEのように、どちらの枠にも収まらない方式も増えています。装置を比べるときは方式名よりも、削る膜・必要な選択比・アスペクト比・ダメージの許容度から逆算するのが確実です。
まとめ(どちらを選ぶか)
ゲートやシリコンのように下地で精密に止めたい、低ダメージで垂直に削りたいならICPが向きます。酸化膜・窒化膜のように強いイオン衝撃が要る膜や、大口径で均一に深いホールを掘りたいならCCPが向きます。判断の軸は「プラズマ密度とイオンエネルギーをどう組み合わせたいか」です。