強誘電体ハフニウム酸化物(Ferroelectric Hafnium Oxide)とは、酸化ハフニウム(HfO₂)に酸化ジルコニウム(ZrO₂)などをドープすることで生じる強誘電性を持つ薄膜材料で、一般にHZO(Hafnium Zirconium Oxide)と呼ばれます。2011年にドイツのBosch社とFraunhofer研究所が、HfO₂ベースの薄膜が強誘電性を示すことを発見して以来、次世代不揮発性メモリ・ロジックデバイスへの応用研究が加速しています。
強誘電体は電場を印加しなくても自発分極を保持する材料であり、その分極反転を「0」「1」の情報として使う強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric RAM)が以前から存在しました。しかし従来のFeRAMにはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの材料が使われており、CMOSプロセスとの非互換・鉛含有の環境問題・薄膜化困難などの課題がありました。HZOはCMOS完全互換・鉛フリー・10nm以下への薄膜化が可能という点で革命的な材料です。
HZOを用いたデバイスとして、FeFET(強誘電体ゲートFET)とFTJ(強誘電体トンネル接合)が主要なアプリケーションです。FeFETはゲート誘電体にHZOを組み込み、分極状態でトランジスタの閾値電圧を変化させてデータを保持します。高速・低電力・シリコンプロセス直接統合という特長から、埋め込みメモリ(eNVM)・ニューロモルフィックデバイス(アナログシナプス素子)として注目されています。
HZOの強誘電性は特定の結晶相(直方晶相)が発現する際に生じますが、この相安定性が課題です。アニール条件・ドーパント濃度(Hf:Zr比)・薄膜厚・下地材料により強誘電特性が大きく変化するため、製造再現性の確保が困難です。また書き換え耐性(サイクル数)の改善も商業利用に向けた重要課題です。IntelはHZOを使った3D NANDのワードライン絶縁膜への応用も研究しています。
HZOは高誘電率ゲート絶縁膜(High-k材料)としても機能するため、先端ロジックプロセスのゲートスタック材料として標準的なHfO₂に代わり、または追加のドーパントを加える形で活用されつつあります。強誘電体メモリデバイス市場は2030年代に向けて成長が見込まれており、HZO成膜対応のALD装置、強誘電性評価装置(PFM:圧電応答力顕微鏡)、材料メーカー(Merck・Entegris等)に事業機会をもたらしています。