反射防止膜(BARC:Bottom Anti-Reflective Coating)は、リソグラフィ露光時にフォトレジスト下の基板やトポグラフィからの光の反射を抑制するために、レジストと基板の間に塗布される薄膜材料です。基板からの反射光がレジスト内で定在波を形成し、CD(Critical Dimension)の変動・フォーカスマージンの低下を引き起こすことを防ぎます。
BARCの作用原理は、①BARC膜の光学定数(屈折率n・消衰係数k)を最適化して界面反射を打ち消す(干渉効果による反射ゼロ化)、②BARC膜内で光を吸収して反射光量を低減する、の2つです。最適な膜厚は露光波長・基板材料・レジストの光学定数に依存し、通常30〜100nmの範囲で設計します。
材料としては、有機BARC(スピンコート型:有機ポリマー系)と無機BARC(CVD・ALD成膜型:SiO2、SiN、SiON)があります。有機BARCはスピンコートで容易に形成できコスト低く多品種展開されており、Brewer Science・AZ Electronic Materials(現メルク)が主要メーカーです。無機BARCはトポグラフィのコンフォーマル被覆が可能で段差の激しい基板に有利です。
EUVリソグラフィへの移行に伴い、BARCの役割も変化しています。EUV(13.5nm)では基板からの反射問題より、EUVレジストの感度・LWR・ストキャスティック効果が主課題となるため、従来のDUV用BARCから、ハードマスク(HM)との組み合わせ設計や、メタルオキサイドレジスト(MOR)固有の下層膜への移行が進んでいます。
BARCはエッチング耐性も重要な特性です。レジストパターンをエッチングで下層材料に転写する際、レジスト上部のパターンをマスクにBARCもエッチングしてから基板エッチングに移行します(BARCオープニングエッチ)。このためBARCのエッチング速度・選択比・エッチング形状(プロファイル)もリソグラフィプロセス全体に影響します。