エレクトロマイグレーション(Electromigration:EM)は、半導体チップの金属配線(主に銅)に高密度の電流が流れる際、電子の運動量移乗により金属原子が電流の流れる方向へ移動する現象です。その結果、アノード側でヒロック(金属の盛り上がり)が、カソード側でボイド(空洞)が形成され、配線抵抗の増加・ショート・断線を引き起こす集積回路の主要な信頼性劣化モードの一つです。
配線の微細化が進むと電流密度(A/cm²)が指数的に増加し、エレクトロマイグレーションリスクが急上昇します。主な対策は以下の3種類です。①バリアメタル(TaN/Ta):銅とシリコン/Low-k絶縁膜の界面にバリア層を設けて銅原子の拡散を抑制します。②銅への合金添加(Mn・Al等):銅配線中に微量の合金元素を添加し、粒界拡散を抑制します。③CoWP/CoWB選択キャップ:配線上面にコバルト系合金を選択成膜し、銅の上面界面からの拡散を防ぎます。
先端ノード(5nm以下)ではバックサイドパワーデリバリーネットワーク(BSPDN)の採用もEM対策の一環です。EMの評価は通常BHTOLテスト(高温加速試験)で行われ、Black方程式を用いてMTTF(平均故障時間)を推定します。PVD装置(バリアメタル・銅シード成膜)・CVD装置(Low-k膜)・CMP(銅平坦化)が耐EM特性を左右する主要プロセスであり、装置・材料・設計の三位一体での対策が必要です。