コバルト配線(Cobalt Interconnect)とは、半導体チップのローカル配線層(M0:コンタクト層〜M1程度)に、従来のタングステン(W)や銅(Cu)の代わりにコバルト(Co)を使用する配線技術です。Intelが2016年頃の10nmプロセス(後の7nm相当)でコンタクトプラグとローカル配線にCoを採用し、業界に広く認知されました。Applied MaterialsはCo成膜装置を製品化し、その普及を後押ししています。
コバルト配線が採用された背景は、タングステンの限界にあります。タングステンはCVDで成膜され長らくコンタクト/ビアのプラグ材料として使われてきましたが、配線幅が20nm以下になると抵抗率が急増するという問題があります。コバルトはWより低い比抵抗(バルク値:約6μΩ·cm、WはCVD成膜で約20μΩ·cm超)を持ち、さらにCu配線との親和性が高く、Cu拡散バリアとライナーを兼ねる薄膜として機能できます。
コバルトのCVD・ALD成膜には、有機コバルト前駆体(Co₂(CO)₈等)を用いた低温プロセスが採用されています。成膜後にCMPで平坦化し、ローカル配線またはコンタクトプラグを形成します。コバルトはCuと異なりシリコン中への拡散が比較的小さく、バリア膜を薄くできるため、実効的な配線断面積を拡大できます。ただしグレインサイズが小さく粒界散乱の影響は残るため、さらなる微細化ではルテニウム(Ru)が後継として検討されています。
Intelのハイブリッド配線戦略(M0:Ru、M1:Co、M2以上:Cu)に示されるように、各配線層の寸法と要求特性に応じて最適な金属を選択する「配線材料多様化」が進んでいます。TSMCやSamsungも一部のプロセスでコバルトを採用しており、局所的な低抵抗コンタクト形成に活用されています。
コバルト配線の普及は、Co前駆体材料メーカー(Umicore・Merck・Air Liquide等)やCVD/ALD装置メーカー(Applied Materials・Lam Research)にとってビジネス拡大の機会を提供しています。コバルトは希少金属でありコンゴ民主共和国への供給依存という地政学リスクもあるため、材料調達の多様化とリサイクル技術の開発も進んでいます。