Low-k絶縁膜(Low-k Dielectric、低誘電率材料)は、多層配線の層間絶縁膜(ILD:Inter-Layer Dielectric)に使用される、低い誘電率(k<3.9)を持つ材料の総称です。従来の層間絶縁膜材料であるSiO₂(k≈3.9)よりも誘電率を下げることで、配線間の寄生容量を低減し、信号遅延(RC遅延)と消費電力を削減することが目的です。
配線の微細化が進むと隣接配線間の距離が狭まり、配線間容量(寄生キャパシタンス)が増加してRC遅延が大きくなります。この問題への対策が低誘電率材料の採用です。k値が下がるほど配線遅延が小さくなるため、ロジックチップの動作速度向上と省電力化に直結します。
Low-k材料の主な種類として、フッ素添加SiO₂(FSG、k≈3.5〜3.7)、炭素添加SiO₂(CDO、SiOC、k≈2.7〜3.3)、多孔質SiO₂や多孔質SiOC(Porous Low-k、k≈2.0〜2.5)があります。Air Gap(k≈1.0、真空に近い誘電率)を配線間に形成するUltra Low-k技術も先端ノードで採用されています。
多孔質Low-k材料は機械的強度・熱伝導率・化学耐性がSiO₂より低く、CMP工程でのダメージや銅の拡散(信頼性低下)が課題です。また、CVD成膜やUVキュア(多孔質化のためのUV照射硬化)の最適化が膜質管理の鍵となります。先端ロジック(5nm以下)では特定の配線層にAir Gap(配線間に意図的に空隙を設ける)構造が採用されています。
Low-k材料の成膜には主にPECVD(プラズマ強化CVD)とスピンコート(SOD:Spin-On Dielectric)が使われます。主要材料サプライヤーはMerck(SILK、Aurora)、Honeywell(NANOGLASS)、JSR、Dow(CYCLOTENE)などです。配線遅延の問題は先端ノードでの主要な性能ボトルネックであり、Low-k技術の重要性は変わりません。
銅ダマシン配線では、Low-k膜へのトレンチ/ビア形成 → バリアメタル(TaN/Ta)成膜 → Cuシード層スパッタ → 電解めっき → CMP平坦化という工程を、配線層ごとに繰り返します。多孔質Low-kは機械的強度が低いため、CMPの圧力による剥離・クラックや、エッチング/アッシングのプラズマによるk値劣化を抑える条件出しが各層で必要になります。