フォークシートトランジスタ(Forksheet Transistor)とは、GAA(Gate-All-Around)ナノシートトランジスタとCFET(Complementary FET)の中間に位置する次世代トランジスタ構造です。NFETとPFETの間に誘電体壁(ダイエレクトリックウォール)を挟んで両トランジスタを一体化し、ナノシートFETの配置面積を削減しながら、CFETほどの工程複雑化なく高密度化を実現します。imec(ベルギーの半導体研究機関)が2019年頃に提案・実証しました。
従来のGAAナノシートFETでは、NFETセルとPFETセルを水平方向に並べて配置し、その間に一定のスペーシング(分離領域)が必要でした。フォークシートはこの分離領域を誘電体ウォールで置き換えることで、NFETとPFETを極めて近接して配置でき、スタンダードセルの幅(セルピッチ)を縮小します。設計上はフォーク(叉)のように二股に分岐したゲート形状が名称の由来です。
フォークシートとCFETの違いは、NFETとPFETが「横に並ぶが非常に近接する(フォークシート)」か「垂直に積層される(CFET)」かです。フォークシートはCFETより製造難度が低いとされており、CFETへの橋渡し技術として位置づけられます。1nmノード前後での導入が議論されており、imecのロードマップではナノシート→フォークシート→CFETという段階的移行が描かれています。
製造上の課題は誘電体ウォールの精密形成です。幅数nm〜10nm程度の薄い誘電体を、NFETとPFETのナノシート積層体の間に選択的に埋め込む工程には、高アスペクト比の原子層堆積(ALD)と精密エッチングが必要です。ウォールの欠陥がリーク電流に直結するため、材料(窒化シリコン、酸化ハフニウム等)の選択と成膜品質の管理が重要です。
フォークシートトランジスタの実現には、ALDや選択成膜技術の精度向上が必須であり、Applied Materials・ASM International・Lam Researchなどの装置メーカーが開発を牽引しています。トランジスタ構造の3次元化トレンドはナノシート→フォークシート→CFETと続き、半導体製造装置の高機能化・高精度化への要求を一段と引き上げる原動力となっています。