オングストロームエラ(Angstrom Era)とは、半導体プロセスノードの命名が「ナノメートル(nm)」単位から「オングストローム(Å、1Å=0.1nm)」単位へ移行する時代を指す業界用語です。Intelが2021年に発表したロードマップで「Intel 20A(2.0nm相当)」「Intel 18A(1.8nm相当)」「Intel 14A(1.4nm相当)」という命名を採用したことで広く認知されました。
Intel 18Aは同社の主要な技術的マイルストーンであり、RibbonFET(Intelが呼称するGAA型ナノシートトランジスタ)とPowerVia(裏面電源供給ネットワーク=BSPDN)を世界で初めて同時に組み合わせたプロセスとして注目されています。2024年後半にテープアウトが実施され、2025年量産を目標としていました。Qualcomm・Microsoftが早期採用顧客として名乗りを上げています。
TSMCとSamsungも独自のサブ2nm世代ロードマップを持っています。TSMCはN2(2025年)の後継としてN2Pおよびさらに先進のA16(1.6nm相当)を計画しており、A16ではSuper Power Rail(SPR)と呼ぶ裏面電源供給を導入予定です。Samsungも2nm(SF2)に続く1.4nm(SF1.4)ノードを開発中です。各社の命名規則は異なりますが、いずれもオングストロームエラの一翼を担います。
オングストロームエラにおける製造の最大課題はパターニング技術です。High-NA EUV(数値開口数0.55)の本格導入、マルチパターニングの更なる高度化、エッジ配置誤差(EPE)の抑制が不可欠です。またトランジスタの3次元化(CFET、フォークシートなど)やエアギャップ誘電体の採用など、構造イノベーションも同時並行で進んでいます。
オングストロームエラへの移行は半導体装置・材料産業に巨大な投資機会をもたらします。High-NA EUV装置(1台あたり3〜4億ドル規模)、原子層堆積(ALD)・原子層エッチング(ALE)装置、高度なメトロロジー装置の需要が急拡大する見通しです。ASML・Applied Materials・Lam Research・東京エレクトロン・KLAなど主要装置メーカーの収益成長の原動力となっています。