メタルゲート材料(Metal Gate Materials)とは、MOSFETのゲート電極として使用される金属または金属窒化物薄膜の総称です。代表的な材料は窒化チタン(TiN)と窒化タンタル(TaN)であり、これらはHigh-k(高誘電率)ゲート誘電体(主にHfO₂ベース)と組み合わせた「High-k/Metal Gate(HKMG)スタック」として、先端ロジックプロセスに不可欠な技術となっています。
HKMGが採用される以前は、ゲート電極にポリシリコン(多結晶シリコン)を使用していました。しかしスケーリングが進むとポリシリコンゲートのゲート空乏化(Gate Depletion)効果により実効的なゲート絶縁膜厚が増加し、電流駆動能力が低下するという問題が生じました。Intelが2007年に45nmノードで高誘電率酸化ハフニウム誘電体+金属ゲートを導入してHKMGが業界標準となり、以降すべての先端ノードで採用されています。
メタルゲート材料の選択は仕事関数(Work Function)チューニングが核心です。NFETは低仕事関数(約4.0〜4.2eV)、PFETは高仕事関数(約4.8〜5.1eV)のゲート材料が必要です。TiNは仕事関数が約4.5〜4.7eVでPFET側に適しており、さらにAlをドープ(TiAlN等)で低下させNFET向けに調整できます。TaNも中間的な仕事関数を持ち、層構成によって柔軟にチューニングできます。複数の金属層を積層したコンポジットメタルゲート構造が先端ノードでは標準的です。
GAA(Gate-All-Around)ナノシートトランジスタにおいては、メタルゲートがナノシートチャネルを全周から囲む必要があるため、ALDによる等角性(コンフォーマル)かつ極薄(数nm)な成膜精度がより重要になります。ナノシート間の狭いギャップ(約5〜8nm)にも均一に充填するためのゲートメタルALD技術と、余分なメタルのエッチバック技術(Gate Cut)が製造の難所です。
メタルゲート材料のALD成膜には、TiCl₄/NH₃(TiN)やTaCl₅/NH₃(TaN)などのプロセスが使われ、Applied Materials・Lam Research・ASM Internationalが主要装置サプライヤーです。高精度な仕事関数制御のため、成膜温度・サイクル数・前駆体純度の管理が厳しく求められます。先端ノードの微細化に伴い、ゲートスタックの総厚(EOT:等価酸化膜厚)を限界まで薄くしながら界面品質を維持する技術開発が継続的に行われています。